始業式。
朝、登校してると美術部の後輩が声を掛けてきた。
「おはようございます!話、聞きましたよ〜。シンクロやってるんですって?日に焼けて真っ黒じゃないですか!」
「あぁ、そうなんだよ。」
「実はねぇ、美術部でポスターとチラシ作ったんですよ〜!」
「ホント!?」
「みんなで作ったんですよ。すっごくいい出来ですよ。」
「ありがとう!うれしいよ!」
「シンクロ終わったら美術部に戻ってきてくださいよ〜」
「了解!」
教室に入っても、クラスメイトはオレと村上の話題で持ちきりだった。
「オトコがシンクロかよ〜!勘弁してくれよ〜!」
「なんだよ、お前ら見に来ないのか?一緒にシンクロやってる水泳部のヤツが、大会の時に周辺の女子校の水泳部の娘たちに宣伝してくれたんだってさ。
女の子、いっぱい来るんじゃねぇかなぁ〜?」
「い、行きます!行きますとも!」
朝礼が終わり、クラスに戻って担任から話がチョコチョコっとあって本日は終了。
今日から学校のプールは水泳部が夜まで使うため、もう全体練習はできない。
オレはいつものスポーツクラブのプールへと向かった。
オレが泳ぎの練習をしていると、酒井がやって来た。
「ここだと思いましたよ。」
「バレてたか。」
「隠してたんですか?」
「ううん。」
「なんじゃそりゃ。」
「それにしても・・・もうすぐだなぁ、本番。」
「長かったような、短かったような。」
酒井が感慨深げに視線を上に上げた。
「あら、お兄ちゃん。今日から学校じゃないの?」
常連のバアサンに声を掛けられた。
「今日は始業式で、午前中で終わりなんです。」
「あら、そう。あ、隣のお兄ちゃんは水泳教えてたお兄ちゃんね。ちょっと待ってて。」
バアサンはそう言うと、プールを上がってどこかへ消えていった。
「・・・さっきのバアサン、知り合いですか?」
「あの賭けの日以来、オレここで人気者になっちゃんてるんだよね〜・・・よくわかんないけど・・・」
バアサンが戻ってきた。
手には缶に入った水羊羹とプリン・・・
「お兄ちゃんたち、これ食べて。はい。一人暮らしだからお中元でもらっても食べきれなくって〜。」
「あ・・・ありがとうございます・・・」
戸惑いながら受け取るオレと酒井。
「お兄ちゃんたち、もしかしてシンクロやるの?」
「えぇ、なんでわかったんですか?」
「だってぇ、お兄ちゃん、プールで変な動きしてたでしょ?『あら〜、あれ何やってるのかしら』って思ってたのよ。
で、さっきここ来る途中、シンクロやるってポスター見かけたから。あ、これかな〜と思って。」
「ははっ、バレちゃってましたか〜」
「私も見に行くわ。ここの仲間にも宣伝しとくわね。」
「ありがとうございます!」
オレと酒井はバアサンに頭を下げた。
当日が楽しみになってきたな〜!