「お待たせ〜!」
安岡が元気に挨拶し、教室へと入ってきた。
「おはよ〜。」
「ジイちゃん連れてきたよ〜。・・・ジイちゃん入って〜♪」
安岡の軽い雰囲気とは打って変わって、『魁!!男塾』の江田島平八みたいなジイちゃんが現れた。
杖をついていて、カクシャクとした感じで・・・こ、恐そう・・・
みんな立ち上がって“気をつけ”の姿勢になり、「初めまして。よろしくお願いします。」と頭を下げた。
ジイちゃんは「ん。」と唸って頷いた。
「口で説明するより体で覚える方が早いじゃろ。早速やってみるかの?」
「・・・は?」
「早く着替えろっ!」
「は、はいっ!」
ひぃぃっ、おっかね〜!
5人で慌てて更衣室へ向かい海パンに着替え、プールに出ると、ジイちゃんがフンドシ一丁で颯爽と現れた。
呆然とする4人。
安岡は「もう慣れちゃってるもんね〜」といつもどおり。
安岡ジイちゃんプレゼンツ古式泳法教室がスタートした。
早速ジイちゃんは、いきなり鉄アレイを持ち出してきた。
なんだろうと思っていたら、ジイちゃんはそれを持ってプールに入ると、それを抱えて立ち泳ぎを始めた!
しかも・・・めちゃ素の顔だ!
「じゃ、これをやってもらう。」
最初から難度高っ!
「おい、優。やってみなさい。」
「はいよぉ〜。」
ザブンとプールに飛び込んだ安岡は、鉄アレイを抱えて立ち泳ぎをした。
で・・できてる!
しかもヘラヘラ笑っている。
何が可笑しいんだよ〜?
「よし。」
ジイちゃんはプールサイドから鉄アレイを取り上げた。
「す、すごいね安岡くん・・・」
水から上がった安岡に、北山が声を掛ける。
「ガキの頃、市民プールでこんなことばっかりさせられてたからさぁ〜。」
と、ちょっと複雑な表情を浮かべた。
村上が「お前も苦労してきたんだな・・・」と安岡の肩を手のひらでぽんぽんと叩いた。
続いて村上、北山、酒井の順に挑戦していった。
ジイちゃんは杖で教え子の頭をコツンと叩きながら、檄を飛ばす。
みんな表情に余裕こそないが、なんとか鉄アレイを抱えてその場に浮き続けることができた。
「痛かったぁ!武器を使って攻撃してくるのはやめてほしいぞ!」
「お前んとこのジイちゃん、ドSだな。」
「う〜ん、古式泳法のことになるとそうかも。」
「けどシンクロやるんならこういうのができないと話にならないかもね。」
そんな会話が繰り広げられる中、オレの番が回ってきた。
「あ、ジイちゃん。その人泳ぐのあまり得意じゃないから無理させないでね。」
安岡はフォローしてくれたが逆効果だったらしく、ジイちゃんの目がキラリ〜ンと光った、気がした。
鉄アレイを持つ前の段階で26回叩かれて、それ以降数える余裕もなくなった。
鉄アレイを抱えた途端、カラダが沈んでいって、何度もみんなに救け出してもらった。
オレ、もう死んじゃう・・・っていうか頼む、死なせてくれ・・・
オレだけ案の定ジイちゃんの前で居残り。
他のみんなはビデオで見た技を見よう見真似で再現して、演目の構成を考え始めている。
早くもオレだけ出遅れてるじゃん!
オレがあの輪に入れるのはいつなんだろう・・・