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昼休み。

オレと村上は、酒井に弁当を渡した後、1年の教室へ向かった。

「ほらほら。あれ見てみ。」
村上に言われ教室を覗くと、ひとりの生徒が教壇の上に立って熱唱している。

「なんだありゃ・・・」
「サッカー部の後輩。部室でもいつもあんな感じ。」
「・・・どこ見て歌ってんの?」
「さぁ?妖精でも見えてんじゃねぇか?」

そいつが歌い終わると、教室はヤンヤヤンヤの大喝采になった。

拍手がおさまったのを見計らって村上が声を掛けた。

「お〜い。安岡〜。」
「あっ!村上先輩!どうしたんですか?こんなとこ来るなんて珍しいですね〜。」
安岡はニコニコと人懐っこい笑顔を浮かべている。

「お前泳げる?」
「ん?泳げますよ〜?」
「お前目立つの好きだよな?」
「ん?嫌いじゃないですよ?」
「はい、決定〜。お前、シンクロ参加しろ。じゃ、また部活でな。」
「え?!何?シンクロって何?」
混乱する安岡を置いて、村上はスタスタ先に帰っていった。

仕方なく代わりにオレが説明するハメに・・・。

「オレ、村上のクラスメイトの黒沢です。夏休みにシンクロ練習して、2学期に発表するつもりなんだ。
安岡、だっけ?参加してくれる?」
「え〜!シンクロってあのシンクロですよね!?・・・すっげぇおもしろそうじゃないですかぁ!参加したいです!」
「ホントぉ!?ありがとう安岡!頑張ろうな!」
ふたりでガッチリと握手をかわした。

 

「安岡、参加してくれるってさ〜。」
「だと思った。オレの目に狂いはなかったな。」
「それでも4人なんだよね〜・・・」
「大丈夫だって。いざとなったら、サッカー部の1年全員貸し出してやるよ。
“その他大勢”で周りで泳がせといたら、それだけでハクがつくだろ。」
「なるほどね〜。頭いい〜。」

 

 

放課後。

教室を出ようと立ち上がったら、教室の外に立っている北山が目に入った。

「あれ〜?北山ぁ、どうしたんだ?」
「あの〜。雄二が何か悩んでるみたいで・・・。水泳のコーチ終わったのに先輩が弁当持ってきたから、それと何か関係があるのかなぁと思って・・・」
「関係あるかどうかはわかんないんだけど、弁当作ってやるから一緒にシンクロしてくれって言ったよ。」

「はぁ!?・・・それ、関係、大アリだと思います・・・」

「酒井は水泳うまいし、最高の人材だと思うんだけどな〜・・・あ、水泳うまいといえば・・・エース北山、君も参加してよ。」

「えっ・・・!?」
「お願いね〜。」

その場に固まったままの北山を置いて美術室へ向かった。


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