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その約一ヶ月後の昼。

街のオープンカフェでひとりコーヒーを飲むカオルの向かいの席に誰かが座った。

「どぉもっ☆」
「ゆ、ユタカぁ?!あの時どうしたんだよ!?」
「ごめんね〜。ちょっと用事があって先に帰っちゃった。」
小さく舌を出し、テヘッと笑ってみせるユタカ。

「あっ、そっかぁ。そうだったんだ〜。あの後、俺たちもユウジの追走を振り切ってなんとか逃げ延びたんだけどさ〜。」
「そっかぁ、それはよかったよ〜☆・・・あのさぁ、また情報が入ったんだけど。」
「ん?何?」
「噂、なんだけどね・・・」
ユカタは声のボリュームを落とし、カオルの耳元で説明し始めた。

「ここからまっすぐ北に行った街に古城があるんだ。昔、その城が落城する時、君主がお宝を城のどこかへ隠したらしいんだ。」
「・・・どんなお宝?」
「『大地の盃(さかずき)』だってさ。誰も見た者がいないから、どんなお宝なのか知られていないんだ。知っているのは、その城で自害した君主だけ。
噂を聞きつけた遺跡荒らし達が挑戦しているらしいんだけど・・・君主の呪いがあるらしくって、誰ひとりとして生きて帰っていないんだ・・・」
「へぇ〜・・・」
「ね?おもしろそうでしょ??やってみない?」
「ん〜、やってもいいけどぉ〜、『春の風』みたいに自分だけ持って行っちゃうんなら協力はできないよ〜。」

カオルは眉間にしわを寄せ、考え込んでいる。

「もうそんなことしないって!俺とカオルとの仲でしょ?信じてよ!お願いっ!」
ユカタが顔の前で両の掌を合わせ、片目だけを開けて懇願する。

「・・・しょうがないなぁ〜。テツヤとヨウイチには俺から言ってみるよ〜・・・」
「ホント?!さすがカオル!カレーおごってあげる!」
「ホントぉ!?やったぁ!」

 

「・・・というワケなん・・・」
「ざけんな。ユタカと一緒に盗みは二度とやらねぇぞ。」
カオルの説明を聞き終わるより先に、テツヤが断りを入れた。

「いやいや、そう言わないでさぁ〜。ユカタももうあんなことしないって言っ・・・」
「俺も・・・御免だ。」
ヨウイチもテツヤと同意見のようだ。

「え〜!ヨウイチも〜?!」
「当たり前だろ!お前、何回ユタカに騙されてんだよ!」
「そうだよ。ユタカがいたら危ない目に遭うばかりで、俺たちに何の得もないし。」
「そういうワケだよ!わかったな!アイツとの仕事は金輪際するつもりねぇから!」

「むぅ・・・わかったよ・・・」

 

「・・・というワケなんだけど・・・」
カオルは、テツヤとヨウイチの協力が得られなかったことをユタカに伝え、申し訳なさそうに頭を下げた。

「そっかぁ・・・。じゃあさ、俺とカオルのふたりで探しに行こうよ、『大地の盃』。」
「ん、わかった。」
「じゃあ、また明日、今ぐらいの時間にココに集合、ね。バイクで迎えに行くから。」
「は〜い。」


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