「待てぇ!!」
背後から大きな声。
ベージュのトレンチコートに同色のハットを被り、拡声器を持った男が拳銃を発砲しながら4人の後を追いかけてくる。
「出た!ユウジだ!」
「待ってたぞカオル〜!今日こそお前を牢獄へ叩き込んでやるからな!」
このユウジという刑事はカオルを目の敵にしており、カオルを捕まえることだけを使命に生きているのだ。
「もうさ、お前だけ一生ユウジに捕まっておけよ!」
「や〜だ〜よぉ〜!何で俺だけ捕まらなきゃいけないんだよ〜?!」
「お前がいると足手まといだし、ユウジがしつこく追っかけてくるから盗みがやりにくいんだよ!」
「やだよ〜!捕まりたくないよ〜!牢屋入ったらカレー食えないじゃん!」
走りながら、そしてユウジからの攻撃に銃で応戦しながら、カオルとテツヤは会話を続ける。
「待てぇ!カオル〜!!牢屋の中でも毎日毎食カレー食わせてやるから〜!」
ふたりの会話に拡声器で割って入りながら、ユウジも必死に食らいつく。
「あった!!」
先頭を走るユタカが声を上げる。
視線の先には、ガラスのケースに収められた『春の風』が月光を浴びてキラリと光っている。
ユタカはライダースーツの胸元から拳銃を取り出すと、ガラスのケースの真上にある小さな装置に向かって撃った。
『ドカーン!』という大きな爆発とともに、辺り一面が爆煙に包まれ、視界が妨げられた。
「ゴホッ!ゴホゴホッ!」
「ゲホッ!何だ一体?!」
「催涙ガス・・・?!」
薄まる煙の中、目を凝らすと、いつの間にかゴーグルと防毒マスクを装着したユタカが『春の風』を手にして立っていた。
「♪悪いね、お先にっ」
ユタカはユウジに向かって敬礼し、ひとり、窓から脱出する。
「ゴホッ!あいつ〜!!最初っから独り占めするつもりだったな!ちっきしょっ!ゲホッ・・・!」
テツヤがユタカの出て行った窓に向かってヤケクソ気味に拳銃をぶっ放した。