大きな厨房を抜け、長い廊下に突入する。
廊下の左右には、超高級な調度品や骨董品の数々が等間隔に並んでいる。
これを盗み出し売り払ったら相当の大金が手に入るところだが、4人はそんなものには全く目もくれず先に進んでゆく。
4人の狙いは『春の風』と呼ばれる大粒のピンクダイヤモンド。
それひとつで、この屋敷にあるすべてのお宝の価値を上回るほどだ。
持ち主である財閥は、自身の邸宅に本物、別荘にイミテーション・・・つまり偽物を保管していると周囲に吹聴している。
しかしそれはフェイクであり、この別荘にある方が本物だという極秘情報をユタカが入手したのだった。
「次のドア開けたらトラップが仕掛けてあるゾーンに突入するみたい。みんな気をつけてね。」
ユタカが入手した情報を元に3人に注意を促す。
ヨウイチがドアの前に歩み出た。
そして刀を抜くと、そのドアを素早く十字に斬った。
ドアはヨウイチの刀によって見事に切り裂かれた。
「え?何で斬ったの?」
ユタカがヨウイチに訊ねた。
「・・・ドアノブに細いコードが繋がってるのが見えたから・・・」
「へぇ〜、よく見てるね〜」
「・・・・・・」
ヨウイチはカオルの感心を無表情と無言で受け流した。
ドアの先には、何の変哲もない長い廊下が続いている。
「何もなさすぎて、逆に匂うな。」
テツヤはポケットからサングラスのようなものを取り出し、装着した。
「おーおー。赤外線センサー、すっげぇ数、行き交ってんな〜。」
そう言うと、カオルの背中を後ろからトンと押した。
「うわぁ!!」
「カオル!右、右!」
「うへっ?!み、右ぃ?!」
「あ、ちょ、左!」
「ひっ!?」
「もうちょっと左!」
「え?え?ちょっと、って・・・」
「あぶなっ、ちっげぇよ!そこを右だよ右!」
「・・・ってお前さぁ!人数分そのメガネ持ってんだろ〜!フレンドパークの客みたいに指示出してないで配れよ、それ〜!」
カオルが逆上しながらテツヤの元にツカツカと戻ってきた。
その体がセンサーに反応し、館内に警報が鳴り響いた。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「もうっ、アンタたちバカじゃないの?!」
ユタカは、カオルとテツヤの胸倉を掴んで交互に睨みつけた。
「ユカタ、そんなこと言ってる場合じゃない。先を急ぐぞ。」
ヨウイチがユタカの腕を引っ張り、廊下に向かって駆け出した。
警報が鳴ってしまった今、センサーを気にする必要はもうない。
「俺たちも行くぞ!バカ!」
「お前こそバカ!言われなくたって行くよ!」
カオルとテツヤもふたりの後を追う。