「・・・んじゃあ、そろそろ行く〜?」
赤いジャケットの男のゆる〜い掛け声を合図に、4人は走り出した。
つづら折りになった車道の上を走るのではなく、標的の洋館を目指して山の斜面を一直線に駆け上がっていく。
黒い帽子の男が洋館の裏手で立ち止まる。
「よし、ここまではOK、っと。・・・じゃ、行くか。」
その後ろからライダーが声を掛けた。
「待って、テツ。」
「何だよユタカ。」
「1名脱落してるみたいだよ。」
ユタカと呼ばれたライダーが、後ろを振り返りながら言う。
「ったく・・・またアイツかよ・・・」
息も切らさず待ちぼうけを食らう3人に遅れること約1分。
赤ジャケットの男がゼェゼェと肩で息をしながら洋館に到着。
「ゼェ・・・早いよ・・・ゼェ、待ってくれたって、ゼェ、いいじゃんかぁ・・・ゼェ・・・」
「知るか。」
すたすたと歩き始める3人。
「あ、待っ・・・ゼェ・・・」
赤ジャケットの男も、ヨタヨタと後を追った。
「普段、料理人が食料を運び入れるのに使われている勝手口は、比較的セキュリティが甘いんだよね。」
ユタカが勝手口の前まで他の3人を案内した。
「そうか。じゃあここから入るぞ。・・・カオル、お前から行け。」
「ひぇ!?俺が先頭かよぉ?!テツヤが先に行ってくれよ〜、その方が確実だって!」
「お前主役だろ?画的(えてき)にお前が先頭でないとおかしいじゃねぇかよ!」
カオルと呼ばれる赤ジャケの男と、テツヤと呼ばれる黒スーツの男の言い争いが始まった。
業を煮やしたユタカが手を挙げた。
「あ〜、もうっ!俺が行くよ!」
「・・・俺が行く・・・」
ヨウイチも手を挙げる。
「じゃあ、俺が行く!」
同じくテツヤも挙手。
「・・・だったら俺が行くよぉ。」
カオルが仕方なく手を挙げた途端、他の3人が挙げた手のひらを水平に差し出し「どうぞどうぞどうぞ」と先を譲った。
「ダチョウ倶楽部パターンかよ!」
カオルが3人の手のひらを叩いた。
その場がシーンと静まり返る。
「何だよ〜、俺がスベったみたいになっちゃったじゃんよ〜・・・んもぅ、じゃあ俺から行くよ。」
ふぅ、とため息をついてカオルがドアに向かって歩いていく。