「ん?台に何か書いてあるぞ?
・・・え〜っと、“『陽の光』『竜の涙』『森の夢』『命の炎』『春の風』。
満月の夜、5つの石が揃いし時、『大地の盃』は現れる”・・・か。」
台には黄・青・緑・赤の石が埋め込まれている。
「え・・・じゃあ今俺が持ってるのは『大地の盃』じゃないってワケぇ?!」
ユタカが悔しそうに声を上げる。
「っていうか、『春の風』ってお前・・・この前お前が盗んだやつじゃないの?」
「あ!そうだ!」
ユタカはライダースーツのファスナーを少し下げ、胸元のペンダントのチェーンを引っ張り出す。
いつもそこに通してある指輪の他に、小さな小瓶がぶら下がっていた。
その栓を開け『春の風』を取り出すと、あとひとつ埋め込むように彫られた台の穴にそっと置いた。
5つの宝石が月の光に一瞬煌いたかと思うと、石の台がサラサラと砂に代わり崩れていった。
その中央に埋もれるような形で、白水晶の大きな盃が姿を現れた。
盃の中には5つの宝石が乗っている。
「これが・・・本当の『大地の盃』・・・」
カオルは宝石を掴んでポケットに収納した後、『大地の盃』を持ち上げ、ユタカに手渡した。
「やっと、終わった・・・」
カオルが一息ついた、その瞬間。
ゴゴゴゴゴ・・・
轟音とともに、塔が上方から崩れ出し、瓦礫が井戸やふたりの周辺に降りかかってきた。
「んも〜っ!そんな気がしたんだよな〜!!」
周囲を見渡し、唯一の出口だと思われる木製の扉に向かって一目散に走った。
が、その扉はふたり掛かりで押しても引いてもビクともしない。
爆弾もさっき水に落ちたことでもう使用できない。
「どうしよう!?」「今度こそホントに死んじゃう?!」
ふたりで必死に扉を叩いていると、扉が裏側から斬られたように崩れた。
「こんなことだろうと思って助けに来てやったぜ。」
向こう側にはテツヤとヨウイチがいた。
「テツヤ!」「ヨウイチ!」
「驚いてる場合じゃない。行こう。」
走り出そうとした途端、テツヤとヨウイチが入ってきた廊下が崩れ落ち、塞がれてしまった。
「っんだよ、めんどくせぇな!」
4人は仕方なくもう一方に伸びた廊下に向かって走った。