カオルの叫び声に、先を進んでいたユタカが振り返る。
「げ!マジ?!」
ユタカは咄嗟に自分の足元を見下ろした。
同様に蔦が絡みつかんばかりに迫ってきていた。
「生きてる!こいつ生きてるよ!」
「いやいや、植物は普通生きてるもんなんだけど!!」
ふたりは蠢く蔦の先をソードで振り払った。
が、切っても切ってもそれは伸びてくる。
蔦はふたりの体だけでなく、振り回すソードに対しても、絡め取るように迫ってくる。
それは思った以上に強い力で、カオルとユタカはソードを奪い取られまいと必死に握り締め、討ち払い続けた。
「爆弾でも使えりゃいいんだけど、ここ崩れちゃいそうだしな〜!」
「もうっ、ラチが明かないよ!」
駆け足で上方へ向かう。
蔦は階段を這うように、ふたりに向かってなおも執拗に伸び続けている。
「あ!階段が終わる!」
やっと階段の終点が見えてきた。その続きには質素な木の扉。
そこを押し開けて扉の中に滑り込むと、扉をすかさず閉め、蔦が入ってこないよう内側から閂(かんぬき)をかけた。
「ハァ・・・ハァ・・・助かった・・・」
カオルは、息を切らしながら扉にもたれるように座り込んだ。
「あ・・・カオル、見て、あれ・・・」
ユタカがゆっくりと指差す。
カオルは項垂れていた頭を上げ、その方向を見た。
石製の台の上に黄金の小さな盃が、満月の光を受け輝いている。
「これが、『大地の盃』・・・?」
ユタカはソードをその場に置き、盃の目映さに魅了されたように歩み寄った。
カオルも立ち上がってその後を追う。