「ここなんだけど。」
俺は部屋の鍵をゆっくり回した。
「入るぞ。」
背後で誰かが唾を飲み込む音がする。
そ〜っと廊下を歩いて部屋を見ると・・・
いた・・・
しかも・・・俺の布団の上で気持ち良さそうに寝てやがる〜!
「おまっ、ざっけんな!人の布団で何やってんだよコラっ!」
半透明の頭をペシッと叩こうとしたが、俺の手はヤツのカラダをすり抜け、スカッと空を切った。
「ん・・・あれ、村上くん帰ってきたんだ・・・おかえり〜・・・」
おばけは目をコスコスと擦っている。
「・・・コレなんだけど・・・」
俺はおばけを指差し、後ろの3人に紹介した。
3人は同様にあんぐりと口を開けて驚いている。
いや、呆れている。
「あら、お友達?いらっしゃい〜。」
「いらっしゃいってお前の家じゃねぇだろぉがっ!」
「俺、黒沢っていいます。よろしくね〜。」
「だぁかぁらぁっ!よろしくじゃねぇっつってんだろ!」
「立ち話もなんだから、みんな座ったら?」
「お前が指図すんな!」
「なんちゅ〜かコレ・・・拍子抜けっちゅ〜か・・・」
床に座りながら、ゲストの酒井が部屋に入って初めて口を開いた。
続くように北山、安岡も床に座る。
「村上くんも立ってないで座れば〜?」
「・・・あの〜、黒沢さん、でしたっけ?」
恐る恐る安岡が声を掛ける。
「はいはい、なんでしょう?」
呼ばれた本人は嬉しそうにニコニコしている。
「カラダ透けてるの、すごいですね・・・」
「うん。俺も最初ビックリしたよ。ははは〜。」
「笑いごとかよ!」
「俺も自分でカラクリがよくわからないんだけど、出掛ける時は透明になるよ。
見つからないように自動的に透明になるのかなぁ?よくわかんない。」
他人事みたいに語ってんじゃねぇよ!
「透明になると体力、っていうのかな、使っちゃうみたいで、すごく疲れちゃうんだ。
2〜3時間ぐらいなら大丈夫だけど、それを超えるとキツい。でもこの部屋に戻ると、なぜか体力回復できるんだよね。
そのかわりこの部屋の中では透明にはなれなくて、ずっと半透明のまま。理由はよくわからないけど、そんな感じかなぁ。」
「ふむぅ〜・・・何だかよくわからないが、スペクタクルだなぁ。」
「黒沢さんはてっちゃんが住む前からここにいるの?」
「てっちゃんって村上くんのこと?うん、そうだよ〜。
村上くんが来るまでは2ヶ月間誰も来なくって暇だったし、寂しかったなぁ〜。」
「黒沢さんよかったね、いい話し相手ができて。」
「北山っ!お前何言ってんだよ!」
「君、北山くん、っていうのか。よろしくね〜。」
「俺、酒井って言います。」
「酒井くん、ね。よろしく〜。」
「安岡でっす!よろしくっ!」
「安岡くん、ね。よろしく〜。」