3.苛。
講義室に入ると、いつものように3人が最後列を陣取り、ダベっていた。
「・・・おはよ・・・」
「おはよ〜・・・って、あれ?テツ寝不足?実家帰ってたの?」
安岡が俺の青ざめた顔を見て、心配そうに顔を覗き込んでくる。
「聞いてくれよぉ〜・・・実は俺の部屋に・・・」
「俺の部屋に?」
「・・・出たんだよ・・・」
「出たって・・・もしかして・・・」
「・・・幽霊・・・?」
「・・・ご名答・・・」
目を真ん丸にして凍てついた表情を浮かべる3人。
「・・・マジ?」
「・・・マジ・・・」
「現実にあるんだ、そういうこと・・・」
「ああ。俺も今まで霊感なんてコレっぽっちもなかったのに・・・見ちまった・・・」
俺は机にガックリと突っ伏した。
「幽霊かぁ。見たことないし、是非一度お会いしたいものだなぁ。」
酒井がトンでもないことを言い出す。
「俺も見たいなぁ。」
安岡もすかさず同調する。
「じゃあさ、この講義出ないでさぁ、見に行ってみようよ、その幽霊。」
北山がさらにトンでもない提案をする。
「アホか!見せモンじゃねぇんだよ!しかも『帰れ』って言ったから、今朝起きた時はいなかったっつうの!」
「いいじゃん、行くだけ行ってみようよ!」
俺は3人に強引に腕を引っ張られながら講義室を後にした。