・・・うとうととし始めた時だった。
玄関の方から「ただいま〜」という声。
空耳か?夢か?
そう思っているうちに、ペタペタという足音が俺の方に近づいてくる。
「へぇ〜、今度は男かぁ〜。」
は??何なの今の声。
俺はうっすらと目を開けた。
ひとりの男が俺の顔を覗き込んでいる!
「うわぁぁぁ〜っ!」
驚きのあまり叫び声を上げてしまう。
当たり前だが、すっかり目も醒めちまった・・・
俺は咄嗟に布団から抜け出し、部屋の隅に蹲った。
「ど、泥棒っ!?」
「え〜!盗るようなもんないじゃん!」
男は部屋を見渡して困った顔をしている。
「じ、じゃあ何だよお前?!」
「何だよって言われてもぉ〜。」
困るなよ!お前が困るな!
困ってるのはこっちの方だ!
目を凝らして男をよくよく見てみると・・・
男のカラダは半透明に透けている・・・
「・・・出た・・・おばけだ・・・」
俺は血の気が引くという感覚を生まれて初めて体感した。
「おばけだなんて〜、そんな人聞きの悪い〜・・・」
だからお前が困るなっつうの!
「帰れ!おばけ!」
「え〜!そう言われてもここしか帰るとこないんだもん!」
「知るか、んなこと!早く出てけよ!ここは俺の部屋だ!」
おばけと遭遇するのも初めてなのに、口喧嘩してるし。
しかも、一方的にこっちから口喧嘩ふっかけてるだけみたいなのが、癪に触る。
けど言い分としては、俺の方が正しいだろ!
「で?」
男が俺に尋ねてくる。
「はぁ〜?!」
声を荒げて聞き返す俺。
「名前、何て言うの?」
「・・・む、村上だけど・・・?」
「へぇ〜、村上かぁ〜。俺は黒沢。よろしくね。」
「よろしく・・・ってオイっ!ちょっと待て!よろしくとは何だ!よろしくとは!」
「え〜、これから長い付き合いになるし〜。」
「何でだよ!」
この黒沢とかいうおばけの言うことはいちいちワケがわからない。
「今、何回生?」
「え・・・今2回生だけど・・・?」
「じゃあ、あと2年以上は一緒に住むってことになるじゃん。」
「何でテメェと一緒に住まねぇといけねぇんだよ!?家賃は俺が払ってんだよ!」
「え〜、邪魔にならないようにいるからさぁ、いいだろ別にぃ〜」
「よくねぇ!帰れ!」
「何だよもう〜。ケチだなぁ!」
「家賃も払わないで一緒に住もうとするヤツにケチなんて言われる筋合いはねぇよ!
とにかく俺は寝る!俺が朝起きるまでには消えとけよ!わかったな!」
俺は布団を頭まで被った。
イライラして眠れない。
「♪〜〜♪♪〜」
「夜中に鼻歌を歌うなバカっ!」
「え〜、だって俺、夜行性だし〜」
1回死んでこい!・・・ってもう死んでるのか。
誰か・・・俺を助けてくれ〜!!