夕暮れから日付が変わるまで奔走していた俺たちは、ジュンさんのトラックの荷台で揺られて眠ってしまっていた。
ことのほか熟睡していたらしく、ジュンさんが扉を開けた音で初めて、俺の部屋、黒沢の元に到着したことを知った。
「お客さ〜ん、着きましたよ〜。」
ジュンさんはタクシーの運転手のように俺たちを呼んだ。
3人で眠たい目を擦りながらトラックを降りると、物音で気づいたのか安岡がベランダから顔を覗かせた。
「安岡、今から運ぶから部屋にいてくれ。」
近所迷惑にならない程度の声で呼び掛けると、安岡は部屋の中へと消えていった。
「村上君、降ろしていっていいか?」
「あ、はいっ、お願いします!」
ジュンさんがハコの中から黒沢の家財道具をひとつずつ運び出してくれる。
それを先ほどの要領で部屋に運び入れていく。
「これが最後だ。」
ジュンさんがテレビを抱えてハコから出てきた。
最後の荷物となったテレビを部屋の前に待機している安岡に手渡したところでジュンさんの元へ戻る。
「ジュンさん、こんな夜遅くにありがとうこざいました。おいくらですか?」
「金?いらないよ。」
「いや、そんなわけには!」
「金は受け取れないな。どんな事情かは知らないけどさ、若いっていいなと思ったよ。その若さを体感できただけで、俺は満足だ。」
「ジュンさん・・・」
「それにさ。あいつには貸しがあるんだよ。」
「貸しってまさか“ちちくり合ってた”ってやつですか?」
「ははは!よくわかったな!マキちゃんってのはさ、ウチの女房の幼なじみなんだよ。女房そのこと知らないからさ。」
ジュンさんはカラカラと笑った。
「じゃ、また何かあったら呼んでよ。俺でよければ力になってやるから。」
ジュンさんはサッと片手を挙げて運転席に消えていった。
「ありがとうございました!」
俺は小さくなるジュンさんのトラックを見送った。