トラックがゆっくりと止まり、サイドブレーキが引かれる音がした。
ノックの音がして、俺たちがいるハコの扉が開かれた。
「かわい子ちゃんが家の前でお待ちだぞ〜。」
ジュンさんが手招きする。
ハコから降りると、玄関のところに黒沢の妹さんが立っていた。
「さ、先ほどはどうも・・・」
妹さんに頭を下げた。
「母から聞いてます。どうぞ、こっちです。」
「お邪魔します」
妹さんに案内され、黒沢の家に上がる。
「ここがお兄ちゃんの部屋です。部屋の真ん中に置いてあるのが一人暮らししていた時の物です。」
整理整頓された部屋の中央にテレビやコンポ、小型の冷蔵庫、小さなタンスなどが固めて置かれていた。
「じゃ、運びます。」
もう一度妹さんに確認してから、バケツリレー方式で運び出す。
俺が酒井に、酒井が北山に、北山がジュンさんに、ジュンさんがトラックに、と流れ作業で運ぶことで意外と早く積み込むことができた。
黒沢のじいさんとばあさんだろうか、寝呆けた顔でその様子を見つめていた。
「気をつけて帰ってくださいね。」
事故に遭った兄を持つ彼女のその言葉は、他の人が言うそれよりも確実に願いが籠もっていた。
「ありがとうございました。」
3人で頭を下げ、黒沢の実家を後にした。