薄暗いトラックの荷台の中、俺たち3人は黙りこくっていた。
「・・・ねぇ。」
「どうした?北山。」
沈黙を破るように北山が口を開く。
「大学で情報を聞き出した時、気が動転してたから気づかなかったけど・・・
今、冷静になって思い返したら、あの段階で黒ポンが生きてるってわかったかもしれないね。」
「どういうことだ?」
酒井が北山に話の続きを催促する。
「職員さん、あの時、『成績や単位は言えない』としか言わなかったんだよね。
もし仮に黒ポンがすでに亡くなっていたとしたら、いきなり単位のことなんて言わないでしょ。
その前に『該当の学生はいない』とか『除籍になってる』とか言うと思うんだよね。
それを言わなかったってことは、まだ大学に籍があったってことでしょ?」
「俺も、気づかなかったな、それは・・・」
「同じく・・・」
俺も酒井も、そんなこと気づかなかった。
が、北山の答えは、的を射ていた。
「それにしても、何で黒ポンは自分が生きてるってこと、言わなかったのかな?」
北山が首を小さく捻った。
「あいつのことだから、言い忘れてたんじゃねぇの?あいつ、ちょっと抜けてるとこあるからさ。」
「・・・もしかして」
酒井が俺の方に顔を向け、ゆっくり口を開いた。
「・・・アンタ、黒ポンと初遭遇した日、大騒ぎして聞く耳持たなかっただけじゃないの?」
あの日の夜のことを思い返す。
・・・・・・なんだかそんなような気がしてきた。
「・・・黙ってるってことは図星?」
北山に聞かれ、言葉に詰まる。
「・・・そのとおりでございます・・・」
「はははっ、そんなことだろうと思ったよ!意外とビビリだからな、アンタ。」
「返す言葉もございません・・・」
はははと笑い、再び訪れる沈黙。
沈黙に耐え切れなくなり、堪らず口を開いた。
「なぁ・・・俺たち、間違ってないよな・・・?」
「わからんが・・・あのまま何もせず黒ポンの苦しんだ姿をずっと見てるなんて、恐らくできなかっただろうな。」
「間に、合うよな・・・?」
「きっと、間に合うよ・・・。」
なんとかしてやりたい。黒沢のこと。
それは3人の、そして俺の部屋で黒沢を見守る安岡の、共通の願いだった。