病院前のロータリーでジュンさんを待つ間、安岡に電話をした。
「もしもし、俺。」
『テツ!黒ポンの様子、どう?』
「・・・面会謝絶で会えなかった・・・」
『面会謝絶・・・』
「そっちは?」
『苦しんだり落ち着いたりの繰り返しで・・・』
「安岡、お願いがある。」
『ん、何?』
「今から俺たち帰るから、それまでに部屋にある俺の物、テレビとか全部押し入れに入れておいてくれないか?」
『はぁ?こんな時に何言ってんの?』
「今から黒沢がそこに住んでた頃に使ってた物、全部運ぶんだ。あいつが帰りたいって思う部屋に戻すから。」
『テツ・・・』
「わかったか?頼んだぞ。」
『ん。わかった。まかせといてよ。』
弱々しかった安岡の声にやっと覇気が戻った。
電話を切ってしばらくすると、1台のトラックがロータリーに入ってきた。
あ、あれだな、ジュンさんって人のトラック。
合図をするようにハザードを2回点滅させ、俺たちの方へ向かってくる。
運転席のドアが開き、中から飄々とした感じのオッサンが降りてきた。
「やぁ。君が村上君かい?」
「あ、はい。子供の時公園で隣のマキちゃんと
ちちくり合ってたジュンさんですか?」
俺の言葉にプッと吹き出す酒井と北山。
「はっはっは!あいつまたそんなこと言いやがって!」
ジュンさんは怒ることもなく豪快にカラカラと笑っている。
さすがおやっさんの友達。まさにルイトモ。
「あ、急いでるんだろ?早速乗ってくか?助手席にはひとりしか座れないけど。」
「俺、荷台でいいです。」
なぜか3人、同じ言葉をハモっていた。
「トラックの荷台なんて乗ったことないもん。乗ってみたいよな〜。」
「おぅ、俺も同意見。」
「同じく。」
「よっしゃ!じゃ、乗ってけ!」
ジュンさんは後ろの銀色のハコの部分の扉を開けた。
ハコの中に順に乗り込んでいく。
中はからっぽで、かなり広い。
「ちょっとだけわくわくするな。」
「不法入国者になった気分だ。」
「競走馬とかね。」
気を紛らわせるように皆で話す。
「じゃ、着いたらまた開けてやるから。走行中は危ないからちゃんと座ってろよ。」
ジュンさんは軽く手を挙げた後、静かに扉を閉めた。