8.隔。
携帯の地図を頼りに黒沢の家に着いた時には9時半をまわっていた。
恐る恐るインターホンを押す。
『・・・はい・・・』
スピーカーから若い女の子の声がする。
「G大2回生の村上です。」
「酒井です。」
「北山です。」
『少々お待ちください。』
ドアが細く開き、高校生ぐらいの女の子が顔を出した。
「・・・お兄ちゃんのお友達ですか・・・?」
「あ。うん。そうなんだけど・・・君は、あの〜・・・妹さん?」
自分より年下の女の子としゃべるのなんて滅多にないことで、ドキドキしながら返事した。
「そうですけど・・・今すぐ○○町の○○総合病院に・・・向かってください・・・」
「・・・あ?」
「・・・い?」
「・・・え?」
妹さんの言葉が理解できず、俺ら3人とも母音しか発音できない。
「今日、お兄ちゃんの容態が急変して・・・両親は病院に向かったんですけど、私は留守番させられてて・・・」
「あいつ生きてたのかよ!」
思わず俺は驚きをそのまま口に出してしまう。
俺の言葉に妹さんの表情が曇った。
「てっちゃん、そんな言い方しちゃダメでしょ?!・・・ごめんね、このお兄ちゃん気が動転してて・・・」
北山が必死にフォローし、誤解を解いてくれる。
「そもそも・・・なんで入院してたの・・・?」
酒井が妹さんの顔色を伺うように質問した。
「・・・え?なんで、って・・・兄が交通事故に遭ってずっと意識が戻ってなかったって・・・知らなかったんですか・・・?」
あいつが・・・生きてる・・・?!
しかも今危険な状態・・・
「・・・とにかく行くぞ!酒井!北山!」
あれこれ考えてる暇はない。
妹さんに礼を言い、走って大きな道路まで出る。
タクシーをつかまえ、行き先を告げる。
「○○総合病院、行ってください!急ぎで!」
走り出すタクシーの中、安岡に電話を掛ける。
『テツ!』
「安岡!黒沢は生きてる!」
『え!?今、なんて・・・?』
「死んでなかったんだよ!病院に向かってる。今、危険な状態みたいなんだ・・・」
『ホント?!信じられない・・・』
「まだこの目で見てないけどホントらしい。で、そっちは?」
『さっきよりまた少し薄くなってる・・・黒ポン今度こそホントに死んじゃうんじゃ・・・?』
「そんなこと言うな!死なせねぇよ絶対!」
『・・・ごめん・・・苦しそうな黒ポンひとりで見守ってたから、つい不安になってきて・・・』
「・・・ごめんな、お前ひとり黒沢まかせっぱなしにして・・・けど黒沢だって頑張ってんだよ。お前も頑張れよ!」
『うん・・・わかった・・・気をつけてね。』
「おぅ、またあとでな。」