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6.転。

 

奇妙な共同生活から1ヶ月が経とうとしていた。

時々あいつらが黒沢を連れ出してくれることで欲求不満は幾分解消され、白髪になることもなかった。
俺も黒沢をサークルや買い物なんかに連れて行ったりした。

違うのは身体が透けてるという点だけで、あとは他の友人と何ら変わらなかった。

 

ある日、バイトを終え帰宅すると、俺のベッドの上で胸の辺りを押さえて苦しんでいる黒沢の姿が目に飛び込んだ。

「黒沢っ・・・!」
俺はコンビニの袋をその場に落とし、黒沢の元へ駆け寄った。

「どうした!?おいっ!黒沢っ!」
「む、村上ぃ・・・わかん、ない・・・なんか苦し・・・」

病院連れて行かなきゃ・・・って無理じゃん!

こういう時はどこ連れて行けばいいんだ?
お寺?神社?

っていうか、身体透けてるからどこかへ連れてくことなんてできないじゃん!

「くそっ!」

 

俺は携帯電話を取り出し、発信履歴で一番最後に通話した酒井に電話をかけた。

『はいはいどうも〜』
「酒井っ!俺!」
『わかってますよ、んなこと言われなくたって。』
「今そんなノンキなやりとりしてる場合じゃねぇんだよ!黒沢がっ・・・」
『黒ポンが・・・どうしたの?なんかあった?』
酒井の声のトーンが変わる。

「なんかわかんねぇけど、すっげぇ苦しそうなんだよ!酒井、俺どうしたらいいんだ?!」
『俺にもわかんないけど・・・とりあえずそっち向かいます!』
「頼む・・・」

俺はただ携帯を握り締め、苦しむ黒沢を茫然と見つめることしかできなかった。


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