交番には巡査がひとり。
やる気なさげにカップ麺を啜っている。
「あの〜・・・」
「何?」
何が『何?』なんだ?
えらそうな奴だな。
ユタカは巡査のリアクションにカチンと来たが、努めて平静を装った。
「朝、財布落としちゃって・・・紛失届、出したいんですけど・・・」
「へ〜ぇ。どこで落としたか覚えてんの?」
「まぁ。この辺りかなってところはくまなく探したんですけど・・・盗られちゃったのか見当たらなくて・・・」
「朝のことだろ?あ〜、もうたぶん出てこないね。誰かがどこかでパァッと景気よくやってるんじゃない?
出てこないだろうけど、ハイこれ、書いておいて。」
あまりにチャランポランな巡査の応対にユタカの怒りが爆発した。
「おい、コラ・・・こっちが下手に出てやってんのに何だよテメエ、その口の聞きはよぉ。
お前がそんなだからなぁ、みんな警察を信用しないんだろうが!わかってんのかよキサマ!
お前なんかなぁ、一生うだつの上がんねぇ巡査でもやって、そうやって毎日カップ麺でも侘しく啜ってやがれ!このバカ警官!」
「何だとこのクソガキ!公務執行妨害で・・・」
「あ、言うの忘れてた。ウチの兄貴、警視庁のキャリアだから。そのツラ、しっかりここに刻み込んだから。」
ユタカは自分の頭を指差しながらニッコリと笑った。
「あ、いや・・・きっと見つかるよ、財布・・・だからここに書いてくれるかな・・・?」
巡査は笑顔を引きつらせて手のひらを返した。
「もういいよ。手遅れ。・・・BANG☆」
ユタカは指でピストルを作り、巡査の胸を撃ち抜くマネをした後、交番を後にした。
「くっそぉ〜・・・自力で探す他ないな。」
ユタカは自転車に乗り、財布を落とした地点へと向かった。
「・・・やっぱないよなぁ・・・」
自転車にまたがったままキョロキョロと探すが、やはり見つからない。
「あ〜、やだなぁ・・・ヨウイチ兄ちゃんに何て言おう・・・。」
ユタカは帰宅するために自転車のペダルを漕いだ。
どんよりとした気分で繁華街を駆け抜けていく。
「お〜ぃ、次ゲーセン行こうぜ!」
「お〜。いいねぇ〜。」
ユタカの目の前をこの辺りで極悪で有名な男子校の生徒5人組が横切っていく。
先頭の不良が手にしてるのはユタカの財布。
「あっ!あれは!」
ユタカは自転車を止め、5人組の後を追った。