「おい!オレの財布を返せよ!」
ゲームセンターの入口で不良グループを呼び止める。
「・・・はぁ?何だてめえ・・・」
「財布返せって言ってるんだよ!」
「財布がお前のって証拠、どこにあるんだよ!」
「犬のキーホルダーつけてあるだろ!オレのだ!」
「何ですかぁ〜?言い掛かりやめてもらえませ〜ん?」
財布を持っていたお調子者キャラの学生がユタカに詰め寄る。
「言い掛かりじゃない!それはオレの・・・」
「やれ。」
一番後ろに陣取っていたリーダー格の学生が口を開いた。
それをGOサインに4人が一斉にユタカに飛び掛かってきた。
ユタカは極悪5人組に捕まり、ゲームセンター脇の細い道に連れ込まれた。
「おらぁっ!」
両脇を固められた状態で頬にパンチが、腹部に膝蹴りがヒットする。
さすが相手は百戦錬磨の不良少年たち。
ユタカのダメージも半端ではない。
「おらっ、さっきの勢いはどうしたんだよ?!」
また殴られると目を瞑った瞬間。
「ぎゃぁっ!!」
ユタカを殴ろうとしていた学生が悲鳴を上げた。
ユタカが目を開けると、その学生のふくらはぎに犬が噛み付いていた。
「お前は今朝の・・・!」
そう、その犬はユタカが病院に連れていったシベリアンハスキーだった。
「何だこの犬っ!」
ユタカの腕を抱えていた学生が犬を蹴り上げようとするのを、今度はユタカが犬を庇った。
ユタカの脇腹に蹴りが命中する。
「かはっ!・・・やめろっ・・・この犬怪我してるから・・・」
「さっきから何をゴチャゴチャ言ってんだよ!」
ひとりの学生がブレザーのポケットを探り、ナイフを取り出した。
「え・・・」
ナイフを出されたらもうこれ以上は抵抗できない。
ユタカは犬を守るように抱き締めた。
「俺たちに逆らうからこういう目に遭うんだよ!」
ナイフを持った学生がユタカ目がけて突進してくる。
もうダメだ!
そう思った瞬間。
ユタカの前に大きな男が立ちはだかった。
男は、ナイフの刃先を手で掴んでユタカを守っていた。