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『あ〜あ。こんなところで寝ちゃって。風邪引くぞ。・・・おい、起きろよ。』

夢の中で誰かに声をかけられる。
夢の中のユタカも深い眠りの真っ最中だ。

『ったく。しゃあねぇな〜。』

夢の中のユタカの体がふわりと宙に浮いた。
ユタカはその心地よい感覚に身を委ねたのだった。

 

「ん・・・あ・・・早く家に帰らなきゃ・・・。」
どのくらいの時間眠っていたのだろうか、ユタカはやっと目を覚ました。

「あ・・・れ・・・?」

何か違和感がある。
いや、実際は違和感がなさすぎて、その違和感に気づくのが遅れた。

なぜなら。

「何でオレ・・・自分の部屋のベッドで寝てるんだ・・・?」

たしか気を失ったのは校庭だったはず。なのに。
目を覚ましたのは自分の部屋のベッドの上。ご丁寧に布団までかけて寝ていた。

「どう・・・なっちゃってるんだ・・・?」

ユタカは部屋を出た。
リビングのテーブルの上には、教室に置きっぱなしにしていたはずのカバン。

カバンの中を探る。

携帯を開ける。
時間は夜の8時過ぎ。

「あ、もうすぐヨウイチ兄ちゃん帰ってくる!ごはん作らないと・・・」

携帯の待受画面に新着メールのマークが表記されている。
ヨウイチからメールが届いていた。

『今夜は徹夜になりそう。ごめんな。』

「あ〜、よかった・・・晩ごはん何も準備してなかったから・・・」

グ〜〜〜ぅ。

「あ!オレ、腹ペコなんだった!」

ユタカはキッチンで湯を沸かし、カップ麺を作り、それを啜った。

「うまい・・・侘しいけどうまい・・・」
豆球だけ点けたキッチンで涙ぐみながらカップ麺をペロリと平らげる。

「あ、そうだ・・・財布なくなっちゃったから交番行かなきゃ・・・ヨウイチ兄ちゃんにバレたら半殺しの目に遭うよ・・・」

大きく深いため息ひとつ。
ユタカは家を出て、自転車にまたがり、交番へ向かった。


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