教室へ向かうと、3時間目の後半だった。
「げぇ〜。大遅刻じゃん。どっかで時間つぶして4時間目から出席しよ〜っと。」
ブラブラと校内を歩いていたら担任と鉢合わせした。
「こらぁっ!授業中に何やっとるんじゃキサマ〜!」
「ひぃっ!」
即、職員室へと連行されてしまった。
「で?どういうことなんだ?」
「いやあのですね道端で犬が怪我してて病院連れてったら縫うことになってね付き添っていざお金払おうと思ったら財布がなくてね落とした場所まで戻ったんですけど財布がなくてね困ったなぁと思ってたんですけどそこの病院の先生がウチの兄の同級・・・」
「あ〜っ!言い訳長いよ!犬が怪我してたっていうのはわかったが、そんなことより授業出る方が大事だろうが。」
「いやでもざっくりと・・・」
「もういい!お前は放課後居残りで校庭10周!以上!」
「え〜〜〜っ!」
「もうすぐ4時間目が始まるから早く教室行け!」
「・・・はぁぃ・・・」
トボトボと重い足取りで職員室を後にした。
教室に戻ったユタカは、クラスメイトに遅刻したことをからかわれるわ、友人たちは面白がって昼休みに食べ物もお金も恵んでくれないわ、散々な目に遭った。
午後からの授業は、空腹で全く手がつかない。
授業中の静かな教室で腹の虫が鳴り、周りの席の友人に笑われた。
しかも放課後はたったひとりで校庭10周。もう餓死寸前だ。
「くっそぉ〜。何もかも、あの犬が悪いんだ・・・アイツに会わなければ遅刻もしなかったし、財布もなくすこともなかったし、食いっぱぐれることもなかったのに・・・」
4週を走り切ったところでとうとう動けなくなり、校庭の端にあるフェンスにもたれ座り込んだ。
『♪ぴんぽんぱんぽーん。え〜、ユタカ君。ちゃんとカウントしてるぞ〜。座ってないで、あと6周頑張りなさ〜い。』
全校放送で名指しで注意される。
近くで練習していた陸上部の女子にクスクスと笑われ、顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
女子が目の前にいる手前、格好悪い姿は見せられない。
ユタカは気力を振り絞って立ち上がり、走り出した。
フラフラ状態のまま何とか10周を走ったユタカは校庭に大の字で寝転がった。
『♪ぴんぽんぱんぽーん。ユタカ、お疲れさ〜ん。もう帰っていいぞ〜。』
秋の西陽は早くも夜空へと変わり始めていた。
近くにいた陸上部の部員達もハードルなどを片付けている。
「も、もう・・・立てないぃ〜・・・」
体力をほとんど使い果たし、ユタカのHPは3ぐらい。
弱っちいザコ敵の軽い一撃で昇天しそうなほどだった。
ユタカは気を失い、そのまま深い眠りに就いてしまった。