耳をつんざくような大きな銃声が響く。
ヨウイチは咄嗟に閉じてしまっていた目をゆっくりと開けた。
目の前には、ヨウイチを守るような形でテツヤが立っていた。
人型の状態は通常時より治癒力が高いのだが、当たり所が悪いのは一目瞭然だった。
テツヤはその場に崩れ落ちた。
「テツヤ!!」
ユタカが床に倒れたテツヤに駆け寄る。
ヨウイチは動揺しながらも社長へと突進し、銃を取り上げて手錠をかけた。
手錠の片方を重厚な造りのデスクの足に留めた後、テツヤの元に走った。
「どうして俺をかばった!?」
「どうして、って・・・さっきヨウイチが言ってたじゃねぇか・・・
ヨウイチはユタカのたったひとりの家族だろ・・・?だから命懸けで守ったんだ・・・」
「テツヤ・・・!」
「俺・・・今回の事件解決に・・・役立ったのかな・・・」
「当たり前だ!お前がいないと事件は解決してなかった!」
ヨウイチはテツヤの手を握った。
「そう、か・・・よかった・・・」
テツヤは犬型に戻り、ふらりと立ち上がった。
「何をしている?!今から病院行くからじっとしとかないと・・・」
「か・・・構うな・・・」
テツヤは引き止めるユタカを振り切り社長へ近づくと、社長の首元に噛みついて歯形を残した。
そして力尽き、その場に倒れた。
「まさか・・・お前・・・お前が、『探偵d.o.G』・・・?」
ヨウイチは、謎の名探偵『d.o.G』の解決したいくつもの事件の検証に立ち会っていた。
その探偵が解決した事件の被疑者は皆、首元に犬が噛んだような痕が残った状態で発見されていたのだった。
警察は、何かに噛まれた痕が残っていることをマスコミに公表はしていなかった。
警察の人間の中でも「探偵はどうやって現場に犬を連れて入ったのか」という話題で持ち切りだった。
しかしその真相は、人間とも犬ともつかぬ謎の生物「テツヤ」の仕業であった。