「・・・ウィルス駆除ソフトの名前・・・」
ヨウイチがポツリと呟いた。
「え・・・?」
ユタカが聞き返す。
「あのソフトの名前『L.U.V.』でしたよね?どういう意味ですか?」
「公式発表では『Light-Up Vaccine(ライトアップ・ワクチン)』の略と言われてますが、実際その正式なソフト名は後付けみたいなんです。」
「後付け?」
「以前社長が言ってたのを聞いたことがあります。“『L.U.V.』は『LOVE』から名づけた”、と。」
「社長、結構ロマンティストなんだよね。」
「あぁ、雑誌のインタビューとか見たことあるけど、そんな感じだな。」
技術者たちの言葉を聞いたヨウイチはある重要なことに気づいた。
「もしかしたら・・・パスワードはもっと“単純”なものかもしれない・・・」
「え?どういうこと?」
「その人にまつわるキーワードや数字をパスワードにするというのが当たり前だと思っていた。
そこが盲点だったんだ。・・・この理論が間違っているかどうかはわからないけど、やるだけやってみる。」
そう言ってヨウイチはコンピューターのキーボードを叩いた。
『love』
エラーが出る。
残り30秒を切った。
『loveu』
「これもダメか・・・」
残り10秒。
「ヨウイチ兄ちゃん!」
『iloveyou』
ぴぴーっ。
「と、止まった・・・?」
「・・・みたいだ。」
はぁ〜っと大きなため息をつく一同。
「よかった〜!これで世界の危機はなくなったんだね!さすがっ、インターネットポリスマ・・・んっ!?」
はしゃぐユタカの首元に誰かの腕が巻き付いた。
側頭部の辺りで小さくカチリという音が鳴る。
ユタカは横目でチラリと音がした方向を見た。
こめかみに銃が突きつけられていた。
「ぴっ、ぴっ、ぴっ、ぴすとるだぁ〜っ!!」