一方その頃、ユタカとテツヤは隠し通路にいた。
「よし、ユタカ。今だ。」
「・・・っ火事だ〜!みんな早く逃げて〜!」
テツヤのGoサインをキッカケに、ユタカが各部屋に聞こえるように叫んだ。
なんとも子供騙しな作戦ではあるが、ものは試しだ。
一度に敵をおびき寄せるには、これが一番手っ取り早い。
「何っ?!どこだ?!」
おもしろいほどに各部屋の扉が一斉に開き、男たちがぞろぞろと通路に出てくる。
「何だお前ら!?」
敵のひとりがユタカとテツヤに気づき、声を上げる。
テツヤはニヤリと笑って男たちに向かって突進していった。
敵に強烈なパンチやキックを的確に浴びせ、ひとり、またひとりと倒していく。
その隙にユタカが部屋に入って、監禁されていた技術者を救け出した。
「今、奥の部屋にあるウィルスが起動しないように阻止してるんです!みなさんも手伝ってください!お願いします!」
「はっ・・・はいっ!」
皆で奥の部屋へ走ってゆく。
テツヤの攻撃を受けてフラつきながらも後を追おうとする敵を、テツヤが食い止めた。
コンピューターの前では、父親がキーボードを叩いていた。
「これもダメです・・・他には?」
「誕生日、出身地、出身校、趣味、留学先・・・あとは何が・・・?社長の思い入れのあるもの、他に何かありませんか?」
ヨウイチは他の技術者にもヒントを募った。
「家族に関連することとか・・・」
「社長は身寄りがなく、一代でこの会社を築き上げたはずだ。それはないだろう。」
「煙草も吸わないし、酒も飲まないし・・・」
技術者からいろんな意見が出されるが、どれもこれといったキーワードが浮かばない。
入力するたびにエラー表示が出て、秒読みのカウントが止まる気配はない。
気づけばタイムリミットまで残り3分になっていた。
もう襲ってくる者もいない。
テツヤも、わからないなりに後ろからディスプレイを覗き込んでいる。