ヨウイチと父親は、すぐそこにある大きな扉の前に立った。
ドアにはセキュリティシステムが取りつけられており、コンピューターで制御されている。
「開けられますか?」
「専用のカードキーがないと開けられないんです。ここのカードキーは上層部の人間にしか配られていない。
・・・少し時間かかると思いますが、ちょっとやってみます。」
父親は先程の部屋にノートパソコンを取りに行き、急ぎ足でドアの前に戻ってきた。
そしてセキュリティシステムの装置とパソコンをコードで繋ぐと素早くキーボードを叩き始めた。
わずか1分少々でロック解除された。
「さすが・・・早い・・・」
ヨウイチはその妙技に呆気にとられた。
「問題はここからです・・・。このドアのロックが解除されたと同時にカウントダウンが始まり、ちょうど30分後に自動的にウィルスが起動するようになっています。
それを阻止するためにはパスワードを入力しないといけないんですが、パスワードは社長が決めて、社長以外は誰も知らないんです・・・」
「じゃあどうすれば?」
「手は尽くしますが・・・」
「やりましょう。やるだけやってみましょう。」
ロック解除されたドアに手を触れると、ドアが自動で開いた。
部屋の真ん中には社長室に置かれているような仰々しいデスクとチェアが置かれていた。
デスクに設置されたコンピューターはすでにカウントダウンを始めていた。
ピッ、ピッという音が秒刻みで鳴っている。
父親がそのコンピューターとノートパソコンを接続し、同様にキーボードを叩いた。
「ダメだ・・・」
父親が頭を抱える。
「どうしました?」
「ヒットするまで自動的に無作為の文字の羅列を高速で入力し続けてパスワードを探るソフトがあるんですが、何の反応も示さない・・・。
いくつか同様のソフトを試したんですが、皆一様に反応がない。恐らく高速で入力するとブロックがかかるみたいです。
このブロックを解くこともできるかもしれませんが、30分では到底無理です・・・」
「・・・パスワードは社長が決めた、と言いましたね?」
「はい、そのように聞いています。」
「社長が決めた、ということは、何か意味がある言葉かもしれませんね。
無作為な文字の羅列なら、社長が決める必要はない。今から社長について調べましょう。何か手がかりがあるかもしれない。」
「はい。」
ヨウイチと父親はノートパソコンを用いて、社長についての情報を集めることにした。