敵が現れる気配がなくなったところで、3人は部屋の奥へと入っていく。
部屋の中には男がひとり、パソコンの前に座っていた。
「あ・・・あなた方は・・・?!」
怯えた表情の男に、ユタカが紙飛行機を差し出した。
「こっ、これは?!」
「息子さんから預かったんだ。あんたが帰らないって心配している。」
テツヤが少年の父親に説明をする。
視線を逸らせ口をつぐんでいる父親に、ユタカは歩み寄った。
「息子さん、『お母さんがかわいそうだから、パパに早く帰ってきてもらいたい』って言ってたんです。
けどそれって子供なりの精一杯の強がりだと思います。
息子さんは、『ボクがしっかりしなきゃ』って口では言ってるけど、ホントは彼も寂しくて仕方ないはずです。
あなたに会いたくて仕方ないはずです。
大切な息子さんに寂しい思いをさせといて、何も思わないんですか?
泣いているお母さんを励ますために、寂しい思いを閉じ込めて元気なフリをしてる・・・
息子さんにいつまでそんなことさせるつもりなんですか?
あんな小さなカラダにこれ以上悲しみを背負い込ませないでください・・・」
ユタカの言葉に父親は頭を垂れ、声を押し殺して泣いた。
「ユタカの言うとおりだ。早く帰ってやれよ、あいつの元に。」
テツヤも加勢して説得すると、父親はようやく口を開いた。
「私は・・・あの家に帰ることはできない・・・」
「何故です?訳を聞かせていただけませんか?」
父親の意味深な発言を受け、ヨウイチが追及する。
「・・・ウチのウィルス駆除ソフトが業界で一番売れているんです。何故だかわかりますか?」
「それは他社よりもワクチンを作るのが早いから、じゃないですか?」
「そうです・・・では何故早いか、わかりますか?」
「それは・・・もしかして・・・ウィルスも作ってるから・・・?」
「そうです・・・さすが刑事さんですね。ウィルスとワクチンを同時に完成させて、ウィルスを先にネット上に蔓延させる。
頃合いを見てワクチンを発表する。」
「自作自演、ということですか。」
「簡単に言うとそういうことです・・・」