「・・・ん?」
ユタカはアスファルトの上に落ちる赤い点を見つけた。
その点はユタカの周辺と犬の定位置とをつないでいる。
「ねぇ、君、怪我してるの?」
「わふっ。」
犬は、後ろ脚をペロペロと舐めた。
脚にはザクッと切れた傷がある。
「うわっ、ひどい傷!大丈夫?!」
「わふっ。」
「そんな傷でよく腰振れたなぁ〜、って今そんなこと感心してる場合じゃないか・・・。あ、この辺にたしか動物病院あったような・・・。」
ユタカはその大きい犬をお姫様抱っこで持ち上げようとした。
「どぅぉりゃぁ〜〜っ!!・・・って重っ!ビクともしない・・・おんぶの方がいいかな?」
今度は犬の前脚を持って立たせた。
「でかっ!俺よりでかっ!」
体重が後ろ脚にかかって痛かったのか、犬はユタカの肩に噛み付いた。
「んぎゃっ!いってぇ〜っ!噛むなよ!ちゃんとおんぶしてあげるから、我慢して!が〜ま〜ん〜!」
なんとか犬をおんぶする前の態勢をとって、そ〜っとカバンを掴んでゆっくりと立った。
「・・・おぉ〜、できた。じゃ行くからね、暴れちゃダメだよ。」
ユタカはヨタヨタと動物病院へと歩き出した。
「それにしてもどうしたの、この傷。」
「わふわふわふわふわふわふ。」
「あ〜、答えてくれてんだ。何言ってるか全くわかんないけど。」