学校へ向かう最中、ユタカは道端に横たわる大きな犬を見つけた。
シベリアンハスキーで、そのうえ成犬だから、やたらでかい。
それに首輪をしていないし、周りに飼い主らしき人影もない。
野良犬だろうか。
どこかの飼い犬が逃げ出したのか。
それとも放し飼いなのか。
どっちにしろ、そんな大型犬がリードにも繋がれずにいるのだから、動物好きのユタカですら若干恐怖を覚えた。
「目ぇ合わさないようにしよ〜っと・・・」
携帯電話を取り出し、画面を見ている振りをして、寝ている犬の横を通り過ぎようとした。
が。
「ワンっ!!」
犬がいきなり真横で大きな声で鳴いたためにビックリして、ユタカは思いっきり腰を抜かしてしまった。
「・・・い、ってぇ〜・・・腰打った・・・」
「ワンっ!ワンっ!」
犬が足元にじゃれてきたかと思うと、いきなりユタカの大腿を両腕で挟んで腰を振り出した。
「こらっ!アホ犬っ!発情する相手間違ってるよ!」
さっきまでビクビクしていたのも忘れ、頭をペシッと叩いた。
犬は、ハッと我に返ったような顔をした後、元の位置におすわりした。
「ったく!制服にいっぱい毛ぇついちゃったじゃん!」
パンパンと制服に付着したを必死に手で払って、落とした携帯とカバンを拾い上げようとした。
「あ゛ぁ〜〜!!」
ちょっと目を離した隙に、カバンからはみ出した弁当箱を犬が勝手に開け、ガツガツと食べ始めていたのだ。
「人の弁当、何勝手に食べてんだよ〜!?」
またもペシっと頭を叩いたが、犬は全く動じる様子もなく食べ続けている。
そして見事完食した犬は弁当箱の隅々まで舐め尽くした後「げふ〜っ」と満足気にゲップをし、さっきのポジションに戻りゴロンと横になった。
「お・・・俺の昼ごはん・・・」
ユタカは半泣きになりながら、空になった弁当箱を片付けた。