建物沿いに進んでいくと、先ほどの玄関の真裏に通用口と書かれた金属製のドアがあり、ガードマンがふたり立っていた。
ユタカとテツヤは物陰に隠れ偵察をした。
玄関とは違い、周囲にも人はおらず出入りする者もいない。
「ここも警備が・・・。こりゃ無理だね・・・。」
ユタカがテツヤに小声で伝える。
「・・・仕方ない。行くか。」
「え?!行くってどうやって?!」
ユタカが驚いている間に、テツヤが犬型のままガードマンに近寄っていく。
「あっ、犬だ。」
「お前、野良か?」
犬型のテツヤはハッハッとしっぽを揺らし、愛敬を振りまきながら、ガードマンの足元にじゃれついている。
「お〜、よしよし。」
「ハラ減ってるのか?」
任務を忘れしゃがみ込んで、テツヤの相手をするガードマン達。
ふたりの間を素早くすり抜けたテツヤは、その背後で人型になり、ふたりの首元に向かって同時にチョップを振り下ろした。
「うっ・・・」
テツヤは気を失ったふたりを支えて、ユタカに声をかける。
「こいつらの制服に着替えるぞ。」
「マジ?!ちょっとやりすぎじゃない?!」
「別にいいんじゃね?借りるだけだし。コスプレ、コスプレ。」
テツヤはふたりを物陰に運び、黙々とガードマンの服を剥ぐ。
テツヤとユタカはその脱がしたばかりの制服を着て、扮装を完成させた。
「オレの服、どうしよう・・・」
「この辺に隠しとくか。」
ユタカの服を抱えて裏口の軒の上にピョンと飛び乗ると、ポンと投げ捨てるように置いた。
「ちょっとっ、何だよその置き方!シワになるじゃん!しかもそんなんじゃ風で飛んじゃうじゃん!」
「・・・ちっ・・・」
「舌打ちするなよ、このバカ犬っ!」
てつやは軒の上で正座してユタカの服を丁寧に畳んだ。
それを重ねてふんわりと棒状に丸めると、リードを巻きつけて括った。
「できたっと。ほら、これで文句ねぇだろ。」
テツヤは軒から飛び降りて、パンパンと手を叩(はた)いた。
「んまぁ、文句はないけどさ、なんか柔道着みたいだね・・・」
「行くぞ。」
「えっ、待ってよ!・・・あ、お兄さんたち風邪引かないでね〜・・・」
ユタカは、下着姿でひっそりと放置されたガードマンを気遣いながら、テツヤとともに通用口からビルの中へと入っていった。