カオルと話をしながら30分ほど歩いて、やっと動物園に到着した。
飼育員に案内されて閉園後の園内を歩く。
「さってっと。まずは猿山から〜。」
カオルは猿山の中に何の躊躇いもなく入っていく。
「どうぞ。」
飼育員がユタカとテツヤを猿山の中に入るように促した。
「え!俺たちも入っていいんですかぁ?!」
「いいですよ〜。」
ユタカとテツヤはビクビクしながら足を踏み入れた。
ウキーウキーとカオルを取り囲んでいたニホンザルの大群が、ユタカとテツヤの方を向いたかと思うと一斉に飛び掛かってきた。
「うわぁっ!」
「はっはっはっ!見慣れない奴が来たから、興味津々だね〜。」
「歓迎ムードですねぇ。」
「猿たち、ストレス発散できてうれしそうだね〜。」
幸せそうに目を細めるカオルと飼育員。
「痛い!痛いってばぁ!ふたりとも何ノンキなこと言ってんですか!?早く助けてください!」
「きゃうんっ!きゃうんっ!」
特にテツヤは、犬猿の仲と言うだけあって、かなり手荒な歓迎を受けている。
「は〜い、みんなその辺でやめてあげて〜。検診ですよ〜。並んでくださ〜い。」
カオルが呼び掛けると、ユタカとテツヤに掴み掛かっていた猿の大群が、行儀よくカオルの前に行列を作って待機した。
「すごっ・・・あの人、ドクタードリトルみたい!」
「あぁ、あのジャンピングシューズのか。」
「それはドクター中松でしょ!」
そんなユタカとテツヤの会話をよそに、猿たちは順番が回ってくるとカオルの前で口をアーンと開けた。
そしてカオルが眼の下を指で押し下ろしたり、胸に聴診器を当てたりして異常がないか診察している。
最後に、ボス猿を診て、「頑張ってね、リーダー。」と一声かけ、終了した。