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「こんにちは〜。」
カオルが経営する動物病院の扉を開け、中に向かって声をかけた。

「いないのかなぁ。『いらっしゃいませ』って返事、返ってこないね。」
「けど鍵が開いてるからな、いると思うぞ。気配も感じる。」
「入ってみようか。」

ユタカとテツヤは診察室に向かって歩いていった。

診察室を覗くと、真剣な面持ちで事務机に向かうカオルの姿が見えた。
さらさらと鉛筆を持つ手が動いている。

「カオルせんせ〜い。」
「ん・・・あぁ!ユタカ君!いらっしゃい!」
カオルの顔からパァっと明るい笑顔がこぼれた。

「どうしたの?傷、治らない?」
テツヤの前にしゃがんで、術後の後ろ足を診る。

「いや、あの〜、遊びに来ただけなんだけど・・・お邪魔だったかなぁ?」
「ううん、大丈夫だよ。あ、何か飲み物持ってくるから、待ってて〜。」

カオルはペタペタとサンダルの音を立てて、診察室から出て行った。

ユタカはそっと机の方に視線を落とした。
白い画用紙のようなものにゴールデンレトリバーの絵が鉛筆で描かれている。

「テツヤ・・・これ見て。」

テツヤは前足を机にかけて伸びをして机上を見た。

「重症だな・・・」

パタパタという音が近づいて、ユタカとテツヤは絵から離れた。

「オレンジジュースでいいかな?」
「あ、はい!ありがとうございます。」
「君はミルクでいい?」
「わふ。」
「なんだよ〜。不服そうな顔するなよ〜。」
カオルはテツヤの頭をワシャワシャと撫でた。

「絵、上手ですね。」
ユタカは、たった今絵に気づいたかのようにカオルに言った。

「あ・・・これね。独学だから基礎も何もできてないんだけどね・・・」
カオルは自分用に持ってきたオレンジジュースを持ったまま、照れくさそうに頭を掻いた。


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