「お前の名前、ユタカだっけ?病院で言ってたろ?」
「そうだよ。オレ、ユタカ。」
「ユタカ、今朝はありがとうな。腹が減ってた時に子犬が大きい道路に飛び出したのを見ちゃってよ。
今の姿に変身してたら犬の時よりも5倍能力が高くなるんだけどさ、『これぐらいなら犬のままでも十分助けれるだろう』って調子乗って助けに行ったら、あのザマだ。
腹減ってるのを計算に入れるの忘れててさぁ。」
テツヤは豪快に笑った。
「笑い事じゃないじゃん!・・・っていうか、さっきナイフ掴んだ手、大丈夫?!」
ユタカはテツヤの手を掴んで広げさせた。
「あれ・・・?傷がない・・・」
「あぁ、あれね。この格好の時は治癒力も高いんだ。今朝は犬のまま怪我したから治らなかったんだ。」
「す、すごいんだね、テツヤって・・・」
「おぅよ!かっこいいだろ?俺。」
「いや、かっこよくはないけどぉ〜。」
「なんでぇ?!」
「え〜?だって半分犬のままなんだもん。」
「バカだなぁ、ユタカ。もしこれが上下逆だったらどうよ?」
「上半身が犬で、下半身が裸の人間・・・ぷっ!あっはっはっはっ!それイケてない!」
「だろ〜?!・・・あ、そろそろ犬に戻るわ〜。人が来たら困るしな。」
そう言ってテツヤは犬の姿に戻った。
「なぁ、ユタカ。お願いがあるんだけど。」
「ん?何?」
犬の格好のまま人間の言葉を話し掛けるテツヤに、ユタカは普通に返事した。
「俺、飼ってくんねぇ?」
「へ?」
「嫌なのか?」
「ううん、そんなことないよ!オレ、動物大好きだし、昔から犬も飼いたかったからすごくうれしいよ〜!だだ、そのぉ〜・・・」
「何?何なのよ?」
「ヨウイチ兄ちゃん・・・ほら、今朝のカオル先生の同級生だって言ってたでしょ?その兄貴が・・・実は動物大嫌いなんだよね〜・・・」
「なんだ、そんなことか。俺がなんとかするわ。」
「ホントぉ?!なんとかなる?やったぁ!犬飼える〜!うれしい〜!じゃあ一緒に帰ろうよ♪」
「おぅ。」
ユタカは犬の姿のテツヤを連れ、自転車を押して帰途に着いた。