安岡は、地面に倒れている友人の元へ駆け寄って、「・・・だっ、大丈夫?!」と声をかけて揺さぶった。
「う〜ん・・・」という唸り声を上げて目を覚ました友人は、バツが悪そうに「安岡・・・ごめんな・・・」と謝った。
俺は安岡と友人の元へ向かった。
「君は・・・この男たちの命令どおり、赤と青のどちらを押しても悪い結果につながるボタンを作った。
しかしそれに疑問と後ろめたさを感じた君は、箱の内部に解除できるボタンを隠しておいた。・・・そうでしょ?」
俺の推測に、彼は小さく頷く。
「あとはお前だけだぞ。」
「観念しろ!」
村上と酒井が、霊能者を挟むように立ちはだかる。
霊能者が憎たらしい笑い声を上げて、嗤う。
「奇跡なんてな・・・俺の思うままに動いてくれるたくさんの『コマ』と大金があれば容易に作れるんだよ。
コマは全国各地、いろんな街やいろんな会社、いろんな組織に潜伏させてある。
だからつぶれかけの会社を立て直すこともカンタンにできるし、『テレパシー』だって『予知』だって『天罰』だって、何だってできる。
俺は何でもできる『万能の神』だ。」
「ふざけんなよ!何が万能の神だよ?!お前を信じていた人のことを脅して利用して・・・カネ巻き上げてコマ扱いしやがって!」
「真実を知ることよりも、信じ続けている方がヤツらにとって幸せなんじゃないのか?」
「何だと・・・!?」
パトカーのサイレンの音して、だんだんこっちに近づいてくる。
その数は1台ではないようで、サイレンの音がだんだん増していく。
村上が霊能者の腕を捕らえた。
「俺がここに潜入する前に、署に連絡しておいたんだ。お前のそのゴタクの続き、署の方でゆ〜っくり聞いてやるよ。・・・ほら、来いっ。」
「そうですか。・・・まぁ、せいぜい頑張ってください。」
「んだと・・・!?」
「さっきも言ったでしょう?たくさんのコマが『いろんな組織』にも潜伏させてある、と。」
「テメェ・・・!」
到着したパトカーから警官や刑事が続々と降りてきた。
「お前ら遅ぇよ。」
「はっ、どうもすいません・・・!ほら、立てっ!」
村上の後輩とおぼしき刑事が警官たちに指示し、霊能者、門番の男、お付きの男の3人をパトカーの後部座席に座らせる。
村上はその様子を見届けた後、安岡の友人の前で立ち止まった。
「お前にも署に来てもらわないといけねぇんだけど。・・・いいな?」
「・・・はい。」
「よし、ついて来い。・・・あと、そこの4人。」
村上は、今度は俺たち4人の方を振り返った。
「お前らも後日事情聴取頼むぞ。」
「わかった。」
「協力する。」
「それと・・・」
「何だ?」
「教団の敷地の脇にクルマ停めたのはお前らか?」
「ああ、それは俺のクルマだ。」
「あそこ、公道。駐禁キップ切っといたから。」
「なっ・・・!!」
「違反金の振り込み、よろしくな。」
村上はそう言い残して、安岡の友人を連れてパトカーへと向かっていった。