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「・・・バッジ?!」
「何だよ?お前コレ知ってんのかよ?」
「いや、ここの『仲間』・・・たぶん信者のことだと思うけど、その人たちがつけてた・・・。」
「マジかよ?!」
「あ、でも・・・彼らがつけてたのは黒だった。赤じゃなかったよ。」
「黒?」
「うん。それに石の周りにある彫金のカンジも違うし。」
「・・・そうか。」

村上の手の上にあるハンカチ、その中でキラリと輝く赤いバッジを見つめていると、酒井がおもむろに立ち上がる気配がし、視線をそちらへ向ける。
酒井は、部屋の隅にある赤くて古いテレビに向かって歩いていく。

「・・・そろそろ『哲子の部屋』の時間だ。どれどれ、テレビ点くかな。」
「そこ何やってんの、こんな時にテレビだなんて・・・」
「俺は『哲子の部屋』を見るのを毎日の日課にしてるんだ。ほっといてくれぃ。」

酒井は、リモコンもついていないその古いテレビの出っ張った電源ボタンを引き出し、チャンネルのツマミをガチャガチャとひねった。
そしてテレビの上についているアンテナのチューナーのダイヤルを、金庫を開けるようにゆっくりと回していく。

「お、やった!うまく電波を拾ってくれたぞ!」

『みなさまこんばんわ、今日の「哲子の部屋」、ゲストに山村紅葉さんに来ていただきました。こんばんわ。』
『こんばんわ〜。』

高そうな着物に、なかなかの眼ヂカラ。
こんな捕らえられた状態で、サスペンスドラマの女王・山村紅葉を見ることになるとは。
俺たち、今まさにサスペンスを地(じ)でいってるよ・・・。

『山村さんは小学生時代、母である山村美紗さんに盗聴器をつけられていたとか?』
『ええ、そうなんですよ〜。あのですね・・・』

相変わらず司会ヘタだな、このオバサン。先にオチまで言っちゃったし。
それにこの話、いろんな番組で見たからもう聞き飽きちゃったよ。
でもあれだな、この話すごいよな・・・一般人には考えられないよ・・・・・・ん・・・?

「・・・あぁ〜〜〜っ!!?」
「You、うるさいぞ!叫ぶから話が聞こえんじゃないか!」

俺と酒井が大声を上げていたその時、突然小屋の蛍光灯が消え、部屋の中が暗くなった。

窓の方から眩しい光が差し込む。
目を細めてそっちに視線をやると、窓の外には例の霊能者と、ゲイツビルで会った男、門番、の3人がいた。


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