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「は〜い、質問。」

これまで黙っていた村上が横から話に入ってきた。
質問するのに手を挙げようとして、でも紐で阻止されて片方の肩だけを挙げたような状態になっていた。

「今の話を総合すると・・・」
「はい、何ですか?」
「お前、詐欺師だな。」
「えぇっ?!」
「逮捕してやる!!」

村上は驚異の反動と跳躍力を駆使してピョコッと立ち上がると、俺の方へとピョンピョンと跳んできた・・・!
変形キョンシーか?!

「わっ・・・き、来たっ!」

なんとかもがくようなカンジで、追ってくる村上から懸命に逃げる俺。

「お前、マジックで200万巻き上げようとしたってことじゃねぇかよ!逃げんなコラ!」
「ひぃぃっ!!誤解だよ、誤解!!」
「何が誤解だテメェ!待てって言ってんだろ!!」
「刑事さん!早くそいつをとっ捕まえてくださいよ!」
「なんでだますようなことしたんですか北山さん!俺、友達のことホンキで心配してるんですよ?!
それに先生も先生ですよ!超常現象の原因を探って否定するのが先生の専門分野でしょうが!
なんでよりによってマジックを超能力だって信じ込んじゃったんですか?!どういうことですか?!」
「あ、いや、そ、それはだなぁっ・・・、あの〜、なんだ、ほら・・・」

運動会の新しい競技みたいな捕物劇。
だました俺とだまされた酒井に、怒りを募らせていく安岡。
痛いところを突かれてしどろもどろに返答する酒井。
このカオスな状態は、兄さんのひとことで収束に向かう。

「・・・でさぁ、これからどうすんの〜?」

喚く声も動きもピタッと止まり、4人の視線が兄さんへ向く。

「このままみんなで野垂れ死にかなぁ〜。」
「そんな野垂れ死にだなんてしたくはない・・・できれば脱出したいよ。」

ノンキに呟く兄さんのコトバに反論し、俺は身をよじった。

「そうだ!大のオトナが5人も集まってるのに、なんで脱出するって発想が出なかったんだ今の今まで!!」
「いや、そうですけど!でも先生、これどうやって・・・?!」
「刑事さん、何とかならんのか?!ピストルで縄でド〜ン、とか!」
「俺さぁ、今、単独行動しててさぁ、銃とか警察手帳とか手錠とか、ぜ〜んぶ署に置いてきちゃったんだよな〜!
ほら、ドラマでよくあんじゃん?ああいうのやってみたかったんだよ〜。」
「バカかアンタはっ!公僕ともあろう人間が・・・こっの、役立たず!」
「なにっ?!テメェ、バカとか役立たずとか何だよ?!もういっぺん言ってみろ!あ?!」
「あぁもうっ、そんな話してる場合じゃないでしょ?!ちょっと静かにしてよ、もう!」

俺が喚いたところでこの騒ぎは収まる様子はないが・・・とりあえず、俺が今やれることを、やるだけやってみないと・・・!

俺は腰の後ろで合わさっている手首の部分を何とか動かし、片方の手を反対側の袖に突っ込んだ。
マジックのタネを仕込ませておくために袖口の裏側に密かに取りつけてあったポケットを、ぎこちなく漁る。

「あっ、た・・・。」

摘んだそれを取り出し、手の中で操作する。

封筒のマジックを作るのにも使った、愛用の小さなカッターナイフ。
5センチほどの大きさの持ち手の裏の部分にマグネットがついてて、冷蔵庫なんかにくっつけておくようなタイプのモノだ。
袖に隠せるほどの大きさという面はマジシャンにとって使い勝手がよい商品だが、しょせんは台所の便利グッズ。
1センチほどしか出ない刃では、なかなか紐は切れてくれない。


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