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「・・・ぁ、いっ、たぁ〜・・・・・ん・・・?」

強い痛みに、俺は顔をしかめて目を開けた。
視界に真っ白な天井が飛び込んでくる。

ズキズキと痛む後頭部を手で擦ろうとした時、俺はようやく異変に気づいた。

「・・・あ?な、なんだっ、これ・・・!」

手を動かせない。
両手を後ろでひとつにくくられていて、両足首も同様に紐でひとつにされていた。

「・・・他のみんなは?!」

横たわっていたカラダをなんとか起こして、辺りを見渡す。

ここはプレハブでできた小屋かだろうか。
ガラス窓の外は、すでに暗くなっている。

カラダをよじって背後も見てみた。

「あ!」

酒井も、安岡も、兄さんも、そして今このピンチの元凶である村上も、手足をくくられた状態で倒れている。

「みんな!」

声をかけるが反応がない・・・。
俺は不自由なカラダを動かして、腰の後ろに回った手で4人のカラダを揺らした。

「大丈夫?!ねぇ、みんな!起きて!・・・お願いっ!」
「・・・あ、北山さん・・・ここ、どこ、ですか・・・?」
「・・・んん〜・・・なんかあった〜?」
「お、きたや・・・うわ、なんだ?カラダが動かんぞ?!」
「いっ、てぇ〜・・・あ、俺のサングラ・・・!あ、ちゃんとかかってる!よかった〜!」

4人とも無事だったらしい。
彼らのさまざまな反応を見て、思わずホッとする。

「よかった〜・・・みんな無事だったみたいで・・・」
「よかったじゃないよ、陽一!そもそもぉ〜、一体これどうなってんだよぉ〜?!なんで俺たちが襲われなきゃいけないんだよぉ〜?!」

いつも温和な兄さんが、突然怒り出した。
そりゃあそうだ、兄さんは事情を知らないまま、ここへ来てしまったのだから。

「・・・ごめんね、兄さん。実は・・・」
「北山。いい、俺からお兄さんに話すから。」

説明をしようとしていた俺の横から、酒井が割って入ってきた。

「酒井・・・」
「・・・すいません、お兄さん・・・。実は、安岡の友人がここのセミナーないし教団にかかわった直後に失踪してしまっててですね・・・。
このセミナーに侵入してその友人を救出するのを、弟さんに手伝ってくれと強く頼んだんです。ですから、お金もですね、倍の・・・」
「お金ぇ?」

酒井の余計なひとことに、兄さんが首を傾げた。

「あわっ!い、いや、何でもない何でもない!酒井っ!余計なことを言わないでよ!だから俺が話すって言ったのに!」
「う、うるさいっ!そもそもお前もおかしいじゃないか!
予知能力があるんなら、お兄さんが田舎から出てくることも、刑事さんが侵入することも・・・それにほら、あれだ、襲われることだって予知できたんじゃないのか!」
「予知能力ぅ?」
「予知とか透視とか、そんなモノできるワケないでしょ!」
「なっ・・・何だとぉ〜?!お前っ、予知できないのか!あの透視もウソだったのか!
俺をだまして200万も巻き上げようとしてたのか?!こンの詐欺師が!!」

しまった!感情的になりすぎたばっかりに、兄さんに一番聞かれたくないコトバを酒井の口から引き出してしまった。

「え??200万ってどういうことぉ〜?」
「え・・・あ、いや、別に・・・何も・・・」
「何も、とは何だ?!じゃああれは何だったんだ?!」

俺のイイワケに、酒井の怒りにますます火がつく。
ここは・・・酒井にホントのことを話した方がいいのかもな・・・。


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