俺が給仕係にしどろもどろ返事していると、再び霊能者が登場した。
参加者の食事が終わったタイミングで戻ってきたらしい。
「満足していただけましたか?」
霊能者の問いかけに、参加者が口々に感想を述べる。
否定的な意見はひとつもない。
まぁ、特に非はなかったから当然といえば当然か。
「それでは、セミナーに戻りましょう。移動しますんで、参加者のみなさん、ついてきてください。」
各々給仕係に「ごちそうさまでした」「ありがとう」などとアイサツしながら席から立ち上がり、先導する霊能者の後を追う。
列の最後方について歩いていると、後ろから「おい」と声をかけられたような気がして立ち止まり、振り返る。
「よっ。」
「げっ・・・」
気のせいじゃなかった。
昨日、霊能者の事務所の前で会った刑事が、そばに立っている木の陰からこっちに向かって手を振っていた・・・!
「な、ななな、何やってんですかアナタ!」
「来ちゃった☆」
「来ちゃったじゃねぇよ!」
驚きのあまり思わず口調が乱れちゃったよ・・・!
「え、この人誰ぇ?陽一の知り合い?」
俺の後ろから顔を覗かせるように兄さんが尋ねてくる。
「あぁ、んまぁ、ちょっとね・・・」
「おぉ、刑事さんじゃないか。」
「えぇえっ、け、刑事と知り合いなの?!陽一、まさか警察のお世話になったんじゃ・・・?!」
サスペンスドラマの山村紅葉ばりに驚く兄さんに、瞬時に「んなワケないでしょ!」と突っ込んだ。
「それはそうと、刑事さん、どうやってここに入ってきたんですか?」
「ちょっとな、門番を、キュッ、とな!」
安岡の質問に飄々と答える村上の首根ッコを、俺は引っ掴んだ。
「『キュッ、とな!』じゃないですよ!」
「やめろよ!グラサンがズレんじゃねぇかよ!」
「うるさいっ!!勝手に入ってきて俺たちに声かけてこないでくださいよ!刑事のクセに危機感なさすぎでしょ!バレたらどうなる、と、・・・ぉ・・・」
村上の胸倉を掴んで詰め寄っていた最中、後頭部に激痛が走り、意識が遠のいていった・・・。