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3分ほど歩くと、ようやく大きな鉄製の門の前に到着した。

「仰々しい門だな・・・」
酒井が門を前に押したり、手前に引いたり、横に引っ張ったりといろいろと試みたが、ビクともしない。

「どうやったら開くんですかね?」
「あ、これかな。」

門柱にインターホンが取りつけられているのを見つけた俺は、そのボタンを押した。
しかし。

「・・・なんにも起こりませんね。」

安岡がそう呟いた時、門の向こう側すぐにある監視小屋から教団の人間らしき男が出てきた。

「あなたたちは・・・?」
「あっ、えっと、セミナーを受けに・・・」

酒井の返答に、門の向こうにいる男が訝しげな表情を浮かべる。

「セミナー受講者は東京から送迎バスでここに来る段取りになってるんですが・・・?」
「あの・・・僕たちそのバスに乗り遅れまして・・・電車とタクシーを乗り継いでここまで来たんです。」

俺がそう答えると、男は渋々といった様子で「ちょっと確認してまいります。」と言い残して監視小屋へ戻り、どこかへ電話をかけ始めた。
電話なのに身振り手振りを交えながら話していた男が、受話器を定位置に戻し、こちらへ戻ってきた。

「・・・どうぞ、OKが出ましたんで。」

不服そうな様子でそう告げた男は、「こちらへどうぞ。」と言い、俺たちを先導してくれた。

案内されたのは、塔の東側にある建物。
1階建てだが、体育館数コ分はあろうかというほどのデカさだ。
こんな大きなモノを数年で建てられるってことは・・・相当あくどい方法で人々から金を巻き上げているに違いない。

「どうぞ、こちら、お入りください。」

男が大きなドアを左右に開いてくれた。
俺たち4人はその隙間からドアの向こうの様子を窺う。

だだっ広い真っ白なスペースに、長テーブルとパイプ椅子が並べられ、そこにセミナー参加者が腰かけている。
その視線の先には、ゲイツビルの2階の窓に貼られていたポスターに載っていた男。
恐らくコイツが例の霊能者なのだろう。

霊能者が俺たちの存在に気づいた。

「ようこそいらっしゃいました。歓迎いたします。ですが・・・ウソはよくありませんね。
先ほど『バスに乗り遅れた』とおっしゃったようですが、今ここにいる定員の30名様、みなさまバスでお越しなんですよ。」
「え、っと、すいません・・・どうしても『先生』のセミナーに興味があって・・・」

咄嗟にイイワケする俺の横で、兄さんが「えっ、あの人先生なの?」などと小声で呟いている。
聞こえてなければいいが・・・

「今回は特別です。今後はこのようなことがないようにしてくださいね。・・・君、そちらの方々に机と椅子を。」
「はい。」

門番の男が、いい姿勢で霊能者にアタマを下げて部屋の隅に向かい、そこに積まれた長テーブルひとつとパイプ椅子4つを、最後列の後ろにテキパキと組み立てる。

「ありがとう。」

霊能者が礼を言うと、男は再びアタマを下げて会場から出ていった。


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