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全員の挨拶と契約が済んだところで、北山は早速数学の問題を解き始めた。
問題を一度読んだだけで数式をスラスラ書いていく。

「すっごいなぁ〜。何でわかるワケ〜?」

黒沢の脱力しそうな言葉に、北山は返事もせず問題を解き続ける。

「はい、完成。どうぞ。」
制限時間30分のテストを、ものの5分弱で解き終えてしまった・・・

「北山っ、お前ホントすごいな!感動したっ!」

酒井は小泉純一郎のように感嘆の声を上げている。

「・・・君たち、まだ気づかない?」
「は?」
「この問題、期末テストとまるまる問題一緒だよ。」
「え!?」
「ほら、黒板に先生が解いてるでしょ。」
「・・・ホントだよ。全く一緒じゃねぇか・・・」

村上が黒板とテスト用紙を交互に見て、ポカンとクチ半開きにしている。

「え、でも北山くん、黒板一度も見なかったよねぇ〜?」
「書き写すより解く方が早いから。」
「・・・」

完敗だ。脱帽だ。
みんな唖然だ。

「・・・早く写さないとまずいんじゃないの?」
「うわぁっ、は、はいっ!」

みんなで北山の解答を見ながら、自分の小テスト用紙に書き写してゆく。

「おい、黒沢。」
「ん?何?」
「お前、問3うまく間違えとけ。俺、問4 間違っとくから。」
「あっ、そうだよね!わかった、そうする!」
「ああっ、じゃあ俺は問2を間違えときますね。」
「じゃ、俺、問1ね!」

俺たち4人のミョ〜な連携プレイに呆気にとられてる様子の北山。
天才にはわからないだろうな、こういう感覚。

「でっきた〜!」

といっても書き写しただけなんだけど、俺が一番乗り。
書き写すだけなのに、問題を解く北山より時間かかってるってどういうこと・・・?

「っしゃ、終わった終わった!北山、サンキューな!」
「ホント助かりましたよぅ。ありがとう。」
「あ〜、あとちょっと〜っ・・・っと、できた!北山ありがとうね〜!」

他のみんなも続々解答を済ませた。(実際は解いてないんだけどね・・・)

「さて。『何でも言うことを聞いてくれる』と約束してくれたみんな。」
「は、はい・・・何でしょう・・・?」

北山のキレイな声が急に低くなって、眼ヂカラが強くなった。
さっきのまでの北山と雰囲気が違う・・・

「見てのとおり吹奏楽部のみんなが倒れちゃったんで・・・今日の応援手伝ってくれる?」
「うん、わかったお安いごよ・・・えええええええ?!」
「ちょっ、応援って!今日カノジョとデートなのにムリだっつの!」
「ち、ちょっと待ってくださいよっ!補習終わったら家で『はぐれ刑事』の再放送見ようとっ・・・」
「応援って言ったってさぁ、俺たちシロウトがどう応援すればいいんだよぉ〜?!」
「約束、したよね・・・?」

北山の眼光がさらに鋭くなった・・・!

「し、しましたしました!な、なぁ、みんな!?」
「し、した・・・な・・・?」
「う、うん・・・した・・・したよ・・・うん・・・」
「じゃ、ついてきて。先生には俺から頼むから。」
「は、はい・・・」

北山の迫力に俺たち4人が縮み上がっていると、遠くから聞こえてきた救急車のサイレンが徐々にデカくなりピタリと鳴り止んだ。

「大丈夫ですかっ?!」
「日射病か熱中症のようでして・・・」

隊員の問いかけに答えているのは数学の先生だけのようだ。

「さ、各自テスト持って。行くよ。」
「は、はいっ・・・!」

ものすっごい貫禄で教室のドアへと向かう北山の後ろを、恐怖におののく俺たちはタテ1列になっておもちゃの兵隊のように硬い動きでついていった。 


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