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そう言えば、外が静かになったな〜、なんて思いながら、ちらりとグラウンドを見る。

「げ・・・!」

吹奏楽部・・・みんな倒れてる・・・

「どうした、安岡。」
「先生っ、グラウンドがトンでもないことに!」

俺の一声でこの教室の全員が一斉に窓際へと駆け寄る。

「うわ、ホントだぁ〜・・・」
「じ、地獄絵図だな・・・」
「つか、あいつらバカじゃね?こんな日に日向であんなことやってりゃ倒れて当たり前だろ?」

「今からちょっとグラウンド行ってくるから、」

先生の言葉に、俺はここぞとばかり手を挙げて提案する。

「先生!俺も救助にっ」
「テストを続けていなさい。」
「いや、先生、テストより人命救助の方が大切・・・」
「全問正解しないと帰れないからな〜・・・じゃ、頑張れ。」

ガラガラ、ピシャン。

「何だよ、あの先公・・・」
後ろで呟く声がして、その後教室は静まり返った。

もう一度グラウンドを見下ろす。

バタバタと倒れてる吹奏楽部の列の中で、ひとり茫然自失といった感じでぼんやりとつっ立っている生徒がいる。

あれは・・・
吹奏楽部の北山だ・・・

北山と俺は同じクラスだ。
北山は賢くてマジメで物静かな感じで、一方俺はというと、にぎやかなメンバーとつるんでる。
だからあまり接点はなかったりする。

だけど今は成績学年トップの彼を利用しないチャンスはない。

「北山ぁ〜!」

俺が呼ぶと、北山はこっちを見上げた。

「ね、お願い、ちょっと助けてくんない?」
「・・・何?」
「北山でないとダメなことなんだよ!何でも言うこと聞くから!ね、お願い!」
「・・・わかった・・・」

北山は俺たちのいる校舎に向かって歩き出した。

「北山くんって、あの、学年トップの?!」
「うん、同じクラスなんだよ。」
「っしゃ!」
「でかした!」

同じクラスってそれだけの理由で拍手喝采だ。

ガラガラ・・・。

「何?俺に何の用事?」
「あの、さ・・・この数学の問題解いてくれない・・・?」
「・・・・・・」
「ねぇ〜、頼むよ〜。お願ぁ〜い☆」
「・・・さっき何でもする、って言ったよね?」
「言った言った!何でもするから、ね、マジでお願い!」
「・・・どれ?」

北山が俺のテスト用紙を覗き込むと同時に、それを取り囲むように3人が寄ってきた。

「安岡・・・この後ろの3人は一体何なの?」
「教えてくれんだろ?」

3人のうちのひとりが、さも当然といった様子で答える。

「安岡には頼まれたけど、君たちには頼まれてないし。・・・第一、名前も顔も知らない人に何でタダで教えないといけないワケ?」
「何だよお前エラそうに、調子乗っ・・・」
「お、俺、黒沢でっす!黒沢薫!俺も何でもするから、よろしくね!」

黒沢って名乗った声の高いヤツが、横からちゃっかり自己紹介して、北山に握手までしている。

「北山です。よろしく。」
「俺は酒井だ。酒井雄二。俺も、頼む。見返りは、必ずや・・・」

我も、とばかりに澄んだ声のヤツも北山に挨拶する。

「よろしくね。」

「ちっ・・・村上。村上哲也だ。」
「で?」
「くっ・・・俺も、何でもしてやっから・・・頼む・・・」
「ん、わかった。よろしく。」


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