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「えっと〜、ありがとうございました〜・・・」
戸惑いながら再び5人でお辞儀する。

「アンコ〜ルぅ!!」
「もう1曲やれ〜!」
客席からそんなことを言ってるのは、俺が初めて楽器を持ったあの日、俺たちが応援した野球部のメンバーだった。

「ね、あと1曲って何やるの?何も練習してないよ〜・・・?」

キョロキョロと4人の顔を見回している黒沢。

「俺たちって言ったら・・・アレしかないっしょ!」
「え?アレって?」
「お前わかんねぇのか?!」
「俺たちの、“原点”ですよ。」
「俺たちの・・・?・・・ああ!アレか!・・・え!マジでアレやるの?!」
「ダイジョウブ。やってみましょ、ジャズアレンジで。」

北山が即興でアレをジャズアレンジで奏でる。

「こんなカンジ。OK?」
「わかった!」
「おけ。じゃ、やりましょ。」

酒井がドラムセットに座り、ドラムを叩く。

俺と村上と黒沢は立ったまま、アレを演奏した。
アレって言ったら、もう、わかるよね?
俺たち5人のバンド名の由来にもなってる・・・そう、アレね!

観客の手拍子に乗ってカラダを揺らして、演奏するのは、そう、『バースのテーマ』!
あの日以来やってなくて久しぶりに吹いたけど、こんなに滑らかに吹けてる。
あんなにヘタだったのに。
しかも、あんな曲なのに、ちゃんとジャズっぽくなってるし。
ちょっと俺たちすごくない?すごい上達っぷりじゃない??
自画自賛しちゃうよ。

5人でアイコンタクトをし合って、曲を終える。

観客ひとり残らずみんな立ち上がって、スタンディングオベーションが起こった。
サマーフェスティバルで俺たちがオジチャンたちに送ったみたいに。
まさか自分たちがスタンディングオベーションを送られる側になろうとは、思ってもみなかったな・・・。

いつまでも止まない拍手に、俺たちは5人横に並んで手を繋ぎ、それを高らかに挙げて応えた。

 

 

大好評に終わった演奏会。

その後、あの照明の犯人はやはり吹奏楽部の部長だった、と知らされた。
体育館のブレーカーを落として立ち去るところを、文化祭の運営委員に見つかり、とっ捕まったとのこと。

運営委員会は、文化祭を台なしにされたことで相当オカンムリだったらしい。
学校側に訴え出て、部長は3日間の停学処分を食らったそうだ。
そりゃそうだよね。俺たちだけじゃない、運営委員だって、文化祭が淀みなく終わるように、この日に向けてアレコレ準備してきたんだから・・・怒るのもムリないよね。

そして吹奏楽部の名前を汚したとかいう理由で、吹奏楽部も退部になっちゃったらしく・・・
なんか、そこまでいくと気の毒だなとかも思ったりするんだけどね。

「安岡〜。」

登校中そんなことを考えながら歩いていると、後ろから声をかけられ、俺は振り返った。

「あっ、北山っ、おはよ〜!」
「おはよう。」
「・・・終わっちゃったね〜・・・文化祭・・・」
「うん。文化祭はね。」
「うん。・・・ん?『は』って・・・?」
「うん、この前のね、文化祭をたまたま見に来てた近くの病院の人がね、『月1回ロビーでジャズ部の演奏会しませんか?』って言ってくれてるんだ。」
「えっホント?!月1回も?!」
「うん。他にもね、駅前の商店街とか施設のクリスマスパーティなんかは、5人で来てって言われてるんだ。
だから、まだ、終わってないよ。」

まだ終わっていなかった。
文化祭が終わったからって、こんなとこで燃え尽きてる場合じゃなかったね。

「っしゃ!やってやる〜!!」
「ははは!その意気その意気!」
「・・・あっ、そうだ!北山にね、またアレンジしてもらいたい曲があるんだ〜♪」
「ん?何?」
「それはね〜・・・」

まだまだいっぱい、みんなに聴かせたい曲がある。
まだまだいっぱい、演奏したい曲がある。
だから、ここが終わりじゃない。

次の目標に向かって、俺たちの物語は続いてゆく―――ジャズのリズムとメロディに乗って、ね。

 

 

end♪

 


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