サビ部分に差しかかり、突然スポットライトが俺たちを照らした。
消えていた照明が復旧したらしい。
明かりがなくたって会場は盛り上がっていたけれど、やっぱりスポットライトの下、演奏するのは気持ちがいいもんだ。
メンバー全員、同じ気持ちなのだろう、みんな満たされた表情をしている。
最初は村上もいなくて4人だけで。
その後村上が入ったけど、それでも北山以外はみんなヘタクソでどうしようもなくて。
吹奏楽部の1・2年生がこっちに流れてきて、吹奏楽部に目をつけられて。
・・・これまでに感じた不安を挙げだしたらキリがない。
だけど、それでも俺たちと一緒にやりたいと言ってくれたヤツらがいて。
こうやって俺たちの演奏を発表できて。
聴いてくれる観客がいて。
途中で辞めなくてよかった、って思う。
曲のラスト、最後の音符。
魂込めてゆっくりと息を吹き込む。
盛り上がるドラムの音。
全ての楽器が同じタイミングで、ピタリ鳴り止む。
それと同時に巻き起こる拍手の音が、波のようにステージ上まで一気に押し寄せる。
うわ〜、トリハダ!感激と感動のあまりトリハダ立っちゃったよ!
みんなでイスから立ち上がり、深々と一礼。
拍手の渦の中、イスを持ってみんなで舞台袖へ捌(は)ける。
「うっわ〜・・・最高だったぁ!」
「うんうん!最高だよ、ホント!」
俺のコトバに反応して、黒沢が頷く。
拍手はまだ鳴り止まない。
しかも拍手の音に交じって、アンコールのかけ声も・・・
「よし、もう1回、出ようか!」
みんなにそう言うと、ある後輩が俺に向かって言った。
「安岡先輩。アンコールは『ザ・バース』の5人で出たらどうですか?」
「えぇっ?!」
「みなさん『ヘタだヘタだ』ってよくネタにしますけど、すっごくうまくなってるんですよ?」
「僕も、5人だけの演奏、聴きたいです!」
戸惑う俺たち5人をよそに、別の後輩たちにも促されて・・・
俺たちは「ホントにいいの?」ってカンジで後ろを振り返り振り返りしながら、ステージに戻っていく。
他のジャズ部のメンバーも舞台袖から拍手で俺たちを送り出してくれた。