「それでは、続きまして〜・・・あら、珍しい。高校生なのにジャズの演奏だそうですよ〜?!
G高校2年生4人で結成されたバンド、『ザ・バース』の『ジャズ 名曲メドレー』でぇ〜す!」
司会の若作りなオバサンのテンション高いアオリで、俺たちはステージへと向かった。
巻き起こる拍手。
一斉に観客の視線がこっちに集まる。
あ〜、キンチョ〜するぅ〜・・・
カッチコチになりながら持ち場に向かう俺に、北山が歩を詰めた。
「アイサツ、よろしく。」
「あぇ?!」
「バンド結成の言いだしっぺでしょ?頑張って!」
そう言い残して北山はピアノへと走っていった。
またヒトゴトかよアイツ〜!!
くっそ、もういい!
テキト〜に済ましちゃえ!
「あ、え〜、・・・『ザ・バース』でぇ〜す・・・。
やり始めてまだ1ヶ月も経ってなくて、バンド名もさっきテキト〜に考えました〜・・・」
「名前だけでも覚えて帰ってくださ〜い。」
俺が一生懸命マジメにしゃべってるのに酒井が芸人のアイサツみたいなこと言うもんだから、客席がドッと湧き上がった。
「演奏はヘタなんで名前以外は忘れてくださ〜い。あっ、でもピアノはうまいんで、そこだけ聞いて帰ってくださ〜い。」
黒沢もなんだかワケのわからないボケをかまして、また一笑い起きる。
思わず「じゃあ俺たち3人いらないじゃん!」って突っ込んだ俺のコトバにまたまた笑い声が上がる。
なんだよ〜・・・『カッコいいジャズやる俺カッコいい!』っていうのを絵に描いてたんだけど・・・
これじゃ、コミックバンドじゃん・・・イメージと違うよ・・・。
「じゃ、やりま〜す・・・」
酒井に視線で合図を送ると、リズミカルなドラムが響き渡った。
もうそこからは夢中だった。
トークの余裕のなさが嘘のよう。
カラダを揺らして、リズムに乗って・・・時々、音が裏返っちゃったりもするけど、すっごく楽しい。
他のメンバーの表情や音色からも、喜びが満ち溢れている。
メドレーたった1曲だけ、5分ほどの演奏。
なんだかあっという間だった。
耳の肥えた人には、きっと堪えがたい演奏だったに違いない。
だけど、俺たちの喜びが観客のみんなにも伝わったみたいで、大きな拍手が返ってきた。
客席を見渡す。
拍手をせずこっちを見ている人がいるのに気づき、目を凝らした。
「・・・村上?」
覚えてたら来てくれる、って言ってたけど、ちゃんと来てくれたんだ。
客席にアタマを下げ舞台袖に戻ってすぐ、3人にそのことを告げた。
「村上が?」「ホント?」
「間違いないよ!ちょっと客席行ってくる!」
「俺もっ!」
4人で客席にいる村上の元へ走った。