【3.劣勢ホームルーム】
翌朝のホームルーム。
The 学級委員sである北山と酒井が前日の放課後に居残って、出し物である劇の大筋の流れを考えたらしい。
それを北山が読み上げ、酒井が黒板に簡単な年表を書いていく。
「まず、縄文時代から弥生時代への移行のシーンからスタートします。
そして飛鳥時代の聖徳太子、平安時代、源平の合戦の時代、戦国時代、鎖国から開国へ。
この7つの時代をピックアップして、日本の歴史を辿っていきます。」
なるほど、さすがThe 学級委員s、うまいことピックアップするなぁ。
「通常、劇出演者と、舞台のセットや小道具作成の裏方担当とに大きく分けますよね?
昨日僕と酒井で考えていた時に思いついたんですが、戦国時代などのシーンは大勢いる方が迫力が出ると思います。
なので、今回の劇は全員で出演というカタチにして、セットや小道具も全員で作る、というのはどうでしょう?」
ざわざわと騒がしくなる教室。
黒板に書き終えた酒井が振り返る。
「たいていこういうのは、みんな面倒がって裏方に回りたがって、演じる側を他のヤツに押しつけようとするだろう?
この先、役も決めないといけないのに、そんなことで時間を取るなら全員参加が手っ取り早いだろう、ってことだ。」
酒井のもっともな意見。
正論で返され、教室は徐々に静まりゆく。
「は〜い。」
「はい、何ですか?」
挙手した生徒に北山が発言権を移した。
「そんなこと言ってもさぁ、音響とか照明とか、あと幕の開け締めとか?裏方はゼッタイ必要だと思うんだけど。」
その意見に、劇に出たくない一派が激しくうんうんと頷き、同調する。
俺ももちろん、そちら側の人間だ。
目立つことは俺の美学に反する。
劇なんて、華があるヤツだけ出ればいいよ。
華のない俺に一体何の役ができるっていうんだ。
できれば、目立たなさそうな木の役やイシコロの役でさえも、ごめんこうむりたい。