「コンビ結成、おめでとう。」
「え?コンビ?何のこと?」
「昨日放課後見たよ。村上と漫才やるんでしょ?」
「まっ、漫才?!やるワケないじゃん!」
教室中に俺の喚き声が思った以上の音量で響き渡り、ハッと我に返る。
どうやら教室にいたみんな、会話を中断して聞き耳を立てていたらしい。
今度は、北山の隣の席、同じく学級委員の酒井がこっちに身を乗り出して会話に入ってきた。
「えっ?昨日村上、『ついにゴールデンコンビ誕生だ!』とか、目薬を差すマネして『来た〜〜〜っ!』とか叫んでたんだがなぁ。」
「いやいや!ないないない!丁重にお断りしたし!しかもあんな小さい目、目薬差せないでしょ!」
「え〜?漫才しないんだ?もったいない。楽しみにしてたのに、ねぇ、雄二?」
「うん、俺も楽しみにしてたんだが。」
「た、『楽しみ』って・・・ふたりとも冗談キツいってば〜・・・」
俺の知らないところで勝手に、俺と村上の漫才計画が着々と進んでいるらしい。
そのことに、とてつもない恐怖と苛立ちを感じる。
そんな俺の複雑な思いをよそに、
「おっはよ〜!」
朝練を終えてきたと思われる村上が、隣の教室まで到達するような大きな声でアイサツしながら、教室へと入ってきた。
「げ、来た・・・」
「お、相方おはよ〜!!」
しかもノンキな笑顔で俺に手を振ってきやがった!
「俺がいつお前の相方になったよ?!勝手に決めんじゃねぇよテメェ!!」
「お?黒沢、いつもとキャラ違うじゃん。」
「なっ・・・?!」
村上の横にいた、同じくサッカー部の安岡のコトバに、思わず絶句してしまった。
この新しい学校で目をつけられないように、細心の注意を払って存在感を消してきたのに!
ついうっかり本性を覗かせてしまったよぉ〜・・・