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俺は校舎の渡り廊下を横切って、校庭へ飛び出した。

「てめぇ待てコラ〜!黒沢〜!!」
「もうっ、追っかけてくんなよ〜!」

残念ながら敵の方が運動神経がよくて、校庭の真ん中辺りであっさり捕まった。
手首をガッチリとホールドされ、振りほどけない。

「ちょっ、手、離せよっ!」
「頼む黒沢!俺とっ・・・」
「ムリだって!」
「頼む・・・俺にはお前しかいないんだよ!」
「俺はそういうの興味ないの!」
「頼む、俺と・・・」
「イヤだったら、イヤだっ!」

知らない間に、俺たちふたりの大声を聞きつけた野次馬が取り囲み、人垣ができている。
校舎の窓という窓からも野次馬が顔を出して、興味津々でこっちを見ている。

非常に・・・ひっじょ〜に、恥ずかしい。
早く何とかしなければ・・・!

と思っていたのに・・・

 

「黒沢っ、一生のお願いだ!俺とっ・・・

 

俺と漫才コンビ、組んでくれ!」

 

敵のさらに大きな声が校庭中に響き渡った・・・!

ギャラリーからドッと笑いが起こる。

俺が爆笑の渦の中心にいるなんて・・・恥ずかしい・・・
消えたい・・・『ドロン』って言って消えたい・・・

「だからっ・・・さっきから何度も言ってるだろ?!俺、漫才とか全然できないから・・・!」

周りの目があるから小声でキョヒったが、敵はまだ大きな声で俺に詰め寄る。

「できるできる!お前は天性の才能を持ってる!俺にはわかる!」
「俺、ここに転校してきてまだ1週間だぞ?!しかもお前とは一度もしゃべったこともないよね?
なのに俺に目星つけんの、ゼッタイ間違ってる!他のヤツに頼めよ!」
「あんまり話したことなくても、ほら、こんなにうまく“かけ合い”できてんじゃん?」
「かけ合いじゃないだろ〜?!これはタダのケンカだよ、ケ・ン・カ!」
「ケンカぁ〜?!お前、周り見てみろよ、さっきからみんなずっと笑ってんぞ?!」
「なっ?!」

たしかに!周りから笑われるケンカって何なの?!
ケンカっていうのはもっと殺伐としててさぁ・・・


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