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「ちょっと待ってろな。」

酒井がそう言い残して、コカ・コーラのショーケースの上にのせられたウォータークーラーに向かう。
その脇に置いてあったプラスティック製の透明なコップを掴むと、慣れた様子でそこに水を汲み始めた。

「酒井くん、いつもありがとうね〜。」
「いえ、これぐらいは自分たちでやりますんで。」

両手で包み込むようにして3人分の水を持ってテーブルへ戻ってきた。

「オバサン、俺はブタ玉。」
「酒井くんはブタ玉やね〜?北山くんは?」
「じゃあイカ玉で。」
「はいはい、ブタ玉とイカ玉ね。で、黒沢くんは?」
「えっ?え、あの・・・」
「注文、しなよ。」

北山が壁に貼られたメニューを指差した。

「え、いや、あの〜・・・俺、今日お金持ってなくて・・・それに、あの、家に何も言ってないから・・・」
「あら、お勘定なんて気にせんでええのよ?今日はオバチャンのオゴリやから。
もしおウチの方(かた)に言うてきてないんやったら、オバチャンからおウチに電話したげるわよ?」
「えっ、でも、そんな・・・」
「いいのいいの気にしなくて。なぁ、北山?」
「うん。気にしなくていいよ。オバサン、1ヶ月に1回はこうやっておごってくれるんだ。」
「ホンマよ〜?食べていってちょうだいよ。オバチャンのお好み、おいしいんやから!ね!」

またみんなの勢いに押されてしまった・・・

「・・・はい、じゃあ・・・いただいていきます・・・」

断れるシチュエーションじゃないよね、これ。どう考えても・・・。


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