それから数日が経ったある日の放課後。
俺が教室で帰り支度をしていると、北山に声をかけられた。
「ねぇ、今日この後、ヒマ?」
「え?・・・あ、うん、特に何の予定もないけど・・・」
「あ、ホント?じゃあこのまま待っててくれる?もうすぐ雄二も来ると思うし。」
「あ、酒井も?」
「うん。」
転校してきてからまだコレといって親友と呼べるヤツはできてないし、この町のことも詳しくないから、まっすぐ家に帰る毎日だった。
だからこういう風に誰かから誘われるのは、この学校に来てから初めてのことだ。
「おお、悪い。待たせたな、おふたりさん。」
教室に入ってきた酒井は、手に持っていた書類を振ってみせた。
「じゃ、行こうか。」
北山と酒井がカバンを持ち、さっさと歩き始めた。
「あ、あの、ど、どこへ・・・?」
「ん?ヒミツ〜。」
勇気を出してぶつけた質問も、酒井にあっさりかわされた。
こ、恐い・・・まさか、体育館のウラでボコられるんでは・・・
「何突っ立ってんの。早くついてきて。」
「ひぃっ・・・は、はいぃっ!」
北山に急かされ、カバンを掴んで早歩きでふたりの後を追った。