「はい、コーヒーでも飲んで。どうぞ。」
缶コーヒーは買えなかったけど、あっけなくもらえたコーヒー・・・あったかい・・・
「・・・おいしいです・・・ぐすっ・・・」
「私はインスタントコーヒーぐらいしか作れなくてね、女房には呆れられてますよ。」
「いや・・・おいしいです、ホントに・・・ありがとうございます・・・」
「困った時はお互い様です。って言っても、誰彼なくお金貸したりはしませんけどね。
落ち着くまでここに座ってていいですよ。」
「ぐすっ・・・ありがとぉございますぅ・・・」
「室長〜、お電話です〜。」
「はい〜。」
女性事務員さんからの呼びかけに答えた事務室長は、俺に「失礼。」と声をかけ業務に戻っていった。
冗談抜きで事務室長が作るコーヒーはすごくおいしくて、飲んでるうちに気持ちも落ち着いてきた。
だけど、あれこれ考えているうちに、誰かに助けてもらってばっかりで非力な自分に嫌気がさしてしまった。
俺はソファから立ち上がり、事務室長のデスク前までずんずん歩いていった。
「すいません!今日から僕に、仕事をさせてください!今日の分の給料はいりませんので!」
事務室長も事務員さんたちも目を真ん丸にして俺を凝視している。
無理もない、よね。
でもじっとしてるなんて、我慢できないから。
「お願いします!今日から働かせてください。何だってしますんで!・・・お願いします!」
もう一度、念押しで言って頭を深々と下げた。
「わ、わかりました。じゃあ、みんな、安尾さんに早速仕事教えてあげてください。」
というワケで、早速仕事教えてもらうことになった。